アドゥール川(読み)アドゥールがわ(英語表記)Adour

改訂新版 世界大百科事典 「アドゥール川」の意味・わかりやすい解説

アドゥール[川]
Adour

フランス南西部の川。全長336km。ピレネー山脈中部に源を発し,北流したのち大きく弧状に西流してバイヨンヌ近くでビスケー湾に注ぐ。中流部まで航行可能。ピレネー北麓にはオート・ピレネー県の中心都市タルブがあり,さらに上流の温泉地バニエール・ド・ビゴールは古くから有名。ガロンヌ川との分水界をなすアルマニャック丘陵はコニャックと並ぶブランデー(アルマニャック)の主産地。支流のオロロン川(ガーブ・ドロロン)との間はベアルン地方と呼ばれ,最大の支流ポー川(ガーブ・ド・ポー)に深く刻まれた丘陵地が広がる。ポー川沿いの中心都市ポーはフォアグラの特産で知られ,周辺では牧畜,トウモロコシ栽培が盛ん。ピレネー北麓のルルドカトリックの聖地で,最上流部にはガバルニー圏谷の観光地がある。オロロン川上流はピレネー越えの交通路として重要。オロロン川南西部はスペインにまたがるバスク地方で,独特の民族・文化をもつ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アドゥール川」の意味・わかりやすい解説

アドゥール川
アドゥールがわ
Adour

フランス南西部,ピレネー山脈に発し大西洋に注ぐ川。全長 335km。水源はピレネー山脈中部,ミディドビゴール山 (2872m) の南側,トゥルマレ峠 (2115m) 付近。カンパンの谷を形成し,バニェールドビゴールを流れてタルブで山麓に出る。北に半円を描きながらアキテーヌ盆地南西部を潤し,エール,ダクスなどを通り,河口近くではバイヨンヌを貫流する。灌漑用水に利用され,下流部はダクスまで航行可能であるが,水量変化が激しく,実際の利用価値は低い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アドゥール川」の意味・わかりやすい解説

アドゥール川
あどぅーるがわ
l'Adour

フランス南西部の川。延長335キロメートル。ピレネー山脈中央部に発し、北流してタルブを経て、ガスコーニュ地方の諸川を合流しながら大きく西方へ曲流し、ダクスから西南流してスペイン国境に近いバイヨンヌの北方で大西洋に入る。冬から春には毎秒1500立方メートル、夏は50立方メートルと流量の差が大きく、水運にはあまり利用されていない。上流のピレネー山中にはカンパンなど若干水力発電所がある。

[高橋 正]

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