アドバース・セレクション(読み)あどばーすせれくしょん(英語表記)adverse selection

知恵蔵 の解説

アドバース・セレクション

プリンシパル(依頼人)がエージェント(代理人)のタイプを識別できず、異なるタイプのエージェントに等しい内容・条件の契約を提示してしまうために、良質のタイプが契約を結ぶことを拒否し、悪質のタイプのみが契約を結びたがる結果、全体の契約が成り立たなくなるようなこと。例えば、中古自動車の売り手(エージェント)はそれが良質か悪質かをあらかじめ知っているが、買い手(プリンシパル)は売買契約の成立する段階でそれらを識別できない。そのために中古自動車の市場価格は、中古自動車の平均的品質によって決まる。売り手は自動車の品質を正しく知っているので、平均的品質よりも劣ったタイプの売り手しか自動車を売りたがらなくなる。買い手はそのことを知っているので、誰も中古自動車を買おうとはしなくなり、売買は成立しなくなる。アドバース・セレクションを回避する方法としては、良質のタイプが自らのタイプの情報を送るシグナリングや、良質は良質、悪質は悪質、と異なる契約を選ぶような自己選抜契約がある。

(依田高典 京都大学大学院経済学研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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