アブハズ自治共和国(読み)アブハズ(英語表記)Abkhazia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブハズ自治共和国」の意味・わかりやすい解説

アブハズ〔自治共和国〕
アブハズ
Abkhazia

ジョージアグルジア)北西部にある自治共和国。アブハジア自治共和国とも呼ばれる。1921年アブハズ=ソビエト社会主義自治共和国として設立され,1990年現名称に改称。首都スフミ。北は大カフカス山脈西部の山稜に境され,南西は黒海に面する。海岸平野は狭いが,暖帯亜熱帯気候で冬も暖かく,平均気温は 1月でも 0℃以上,年降水量は 1200~1400mm。全面積の 55%が森林に覆われる。グルジア人約 44%,ロシア人約 16%のほか北カフカス諸言語の西方語派に属する言語をもつアブハズ人(→アブハズ族)が約 17%居住する。ただし,内戦をうけ 1993年にはほとんどのグルジア人と一部のロシア人らがジョージア本土に逃れた。住民の約半数が農山村に住み,山地では放牧林業を,低地丘陵では茶,柑橘類,スモモなどの栽培を行なう。主産業は茶,たばこ,缶詰,香油などの製造,皮革製靴,木材加工,採炭業である。沿岸部は保養地帯となっていて,ガグラ,グダウタ,スフミなどの保養都市が並ぶ。またブズイビ川支流の上流部に地震によってできたリツァ湖とその周辺は自然保護区に指定され,訪れる人も多い。ソチトビリシを結ぶ鉄道が通るほか,沿岸をソチとバトゥーミを結ぶ観光定期船が通りモスクワ,トビリシなどと結ぶ空路がある。1992年7月に主権宣言し,これを認めないジョージア政府と対立,アブハズ側を支援するロシアも介入し内戦状態となった。1993年9月,ロシアが一転してジョージア支援に回ったため紛争は急速に鎮静に向かった。1994年停戦に合意したが,緊張状態は続いた。1999年公式に独立を宣言,しかし国際社会からは承認されなかった。2008年8月,同じくジョージアからの分離独立を目指す南オセチヤ自治州にジョージア軍が進攻しロシア軍も交えた紛争が勃発,アブハズにも飛び火し戦闘が行なわれた。同 8月ジョージアとロシアは停戦合意したが,ロシアはアブハズと南オセチヤの独立を承認し,国際社会から非難された。面積 8660km2。人口 18万(2007推計)。

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