アマガサヘビ(英語表記)krait

翻訳|krait

改訂新版 世界大百科事典 「アマガサヘビ」の意味・わかりやすい解説

アマガサヘビ
krait

熱帯アジアに産するコブラ科アマガサヘビBungarusに属する危険な毒ヘビ総称パキスタン,インド,東南アジア,中国南部,台湾分布英名ヒンディー語の〈三角頭のヘビ〉によるが,三角頭はそれほど顕著でなく,頸部のくびれも少なくて,一見無毒ヘビのように見える。12種が知られ,1種以外は背面の正中線上の体鱗1列がとくに大きいのが特徴。暗色の帯状模様が胴から尾にかけて並ぶ。最大種はインド,東南アジア,中国南部に分布するキイロアマガサB.fasciatusで,全長1.5~2.1m,背面中央列のうろこが隆起し,尾の先端がちぎれたように丸いのでマルオアマガサの別名もある。毒性が強くきわめて危険な種類で,行動が能動的になる夜間には,踏みつけたりして被害を受ける。しかし昼間はおとなしいので,生息密度が高く居住区にも出没し,致命率が高いわりには被害数は少ない。低地の森林や水田に多いがミャンマーでは2000mの高地にも分布し,また居住区にも及ぶ。餌はおもにコブラを含む他のヘビ類で,ときにはトカゲ,魚もとらえる。夏5~12個を産卵し,雌がそばで守る。生まれた子ヘビは30cm余り。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマガサヘビ」の意味・わかりやすい解説

アマガサヘビ
あまがさへび / 雨傘蛇
krait

爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目コブラ科アマガサヘビ属に含まれるヘビの総称。同属Bungarusのものは、「三角頭のヘビ」を意味するヒンディー語に由来するクレイトの名でもよばれる危険な毒ヘビ。パキスタン、インド、東南アジア、中国南部、台湾に12種が分布し、1種を除き、背面の正中線上の体鱗1列が他より大きいのが特徴。頭部から尾部にかけて幅広い暗色の帯状模様が並び、種類によって形や数に違いがある。性質がおとなしく、頭頸(とうけい)部にくびれが少ないため無毒ヘビのようにみえるが、上顎骨(じょうがくこつ)の先端には1対の毒牙(どくが)を備え、毒性が激しいためきわめて危険である。夜行性で夜間は行動が能動的となり、現地では人が踏みつけてかまれ咬症(こうしょう)を受けるケースが多く、致命率も高い。最大種はキイロアマガサBungarus fasciatusで全長1.5~2.1メートル、尾の先端がちぎれたように円みを帯びて終わっている。生息密度が高く、居住区周辺にもすむため被害が多い。餌(えさ)はもっぱら毒ヘビのコブラを含むヘビ類で、トカゲや魚をとらえることもある。卵生で、夏に5~12個ほどを産卵し、傍らで雌がこれを守る。

[松井孝爾]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アマガサヘビ」の意味・わかりやすい解説

アマガサヘビ
Bungarus multicinctus

トカゲ目コブラ科。体長 1.5m内外。黒い体に淡色の環状模様をもつ。頭部は小型で,太さが頸部とあまり違わない。夜行性で,下水溝などを伝って人家に侵入してくることもある。攻撃性は低いが有毒で,毒性の強い神経毒をもち,咬まれても痛みを伴わない。台湾,中国南部,インドシナ半島などに分布し,平地の水辺に好んですむ。ネズミ,カエル,他のヘビなどを捕食する。

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