アメリカオシ(英語表記)Aix sponsa; wood duck

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アメリカオシ」の意味・わかりやすい解説

アメリカオシ
Aix sponsa; wood duck

カモ目カモ科。全長 47~54cm。繁殖期の雄は頭上,側頸が金属光沢のある緑色で,冠羽(→羽冠)が後頸に伸びる。顔は独特で,黒い中に眼輪と虹彩が赤く,基部から側頭を通って側頸までの 1本と,眼の後ろから喉を通って頬と後頸に向かう 2本の白い帯がある。胸の脇と腹の境,脇の上部にも白帯が入る。背は青緑。嘴は基部と脇が黄色で,ほかは黒い。胸は紫褐色で細かい白斑があり,脇はくすんだ黄色で,腹は灰白色。雌はオシドリの雌にやや似て地味である。頭上から背が灰褐色で,同色の冠羽があり,眼のまわり,腹が白い。脚は黄色。カナダ南部からメキシコまでロッキー山脈などの高山地帯を除いて北アメリカに広く分布し,北部で繁殖する鳥は分布地の南部に渡って越冬する。繁殖期以外は湖沼かその近辺に生息するが,オシドリ同様水辺に近い森林の樹洞などの穴内で営巣し,巣箱もよく利用する。孵化したばかりのは助けなしに数十mの高さから地面に飛び降り,雌について歩き,たどり着いた水辺で育てられる。食べ物は水草や,草の種子,ドングリ(堅果)など植物質が大部分を占めるが,昆虫類なども食べる。(→ガンカモ類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アメリカオシ」の意味・わかりやすい解説

アメリカオシ
あめりかおし
wood duck
[学] Aix sponsa

鳥綱カモ目カモ科の鳥。オシドリと並ぶもっとも美しいカモで、カロライナダックCarolina duckともよばれる。翼長約22センチメートルでオシドリとほぼ同大。カナダ、北アメリカの温帯部に広く分布し、林のある湖畔や川沿いにすみ、樹上に止まることが多く、樹洞や巣箱に営巣する。以前はきわめて普通種だったが、環境変化と狩猟により1950年代には絶滅が危ぶまれた。しかし以後、保護によってふたたび増加した。雄はオシドリとはまったく異なる美しさであるが、雌は似ている。

 飼育下では他のカモ類Anas属、Aythya属などと交雑し、オシドリともまれには雑種ができるが、雄の羽色と求愛行動の著しい違いのためかむずかしく、野生での他種との交雑例はない。系統的には樹上性のバリケン属Cairina系であるとされる。

黒田長久

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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