アメリカ建築(読み)アメリカけんちく(英語表記)United States architecture

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アメリカ建築」の意味・わかりやすい解説

アメリカ建築
アメリカけんちく
United States architecture

17世紀以後現代にいたるアメリカの建築。 17世紀のニューイングランドの建築は,オランダとイギリスの影響を受けた住宅で,17世紀末にはウィリアムズバーグで当時最も進んだ公共建築物が建てられた。 18世紀にはイギリスの J.ギブズの建築に刺激された聖堂ジャコビアン様式 (→ジョージ朝様式 ) の住宅が建てられるようになった。 C.ブルフィンチボストンの州会議事堂と大統領ジェファーソンのバージニア大学は,18世紀末と 19世紀初頭の代表作である。 19世紀初頭からギリシアリバイバルが盛んとなり,聖堂にはゴシック様式が用いられるようになった。 19世紀中期から,アメリカ建築は独自の特色を示し,ホテル建築や浴室エレベータのような建築設備の面では,ヨーロッパより一歩先んじており,また同時期にはアメリカ独自の木造住宅様式も発展した。しかし,アメリカ建築の水準をヨーロッパ並みに高めたのは,フランス・ルネサンス様式を得意とした R.ハントと,フランス・ロマネスク様式から独特の様式をつくりだした H.リチャードソンで,ともにパリのエコール・デ・ボザールで学んだ建築家である。続く C.マッキムらもボザールの出身で,以後アメリカ建築の主流はボザール派が占めることになった。他方,シカゴでは鉄骨構造による高層建築が試みられ,1890年頃その技術が確立した。第1次世界大戦頃からニューヨークに中心が移り,1930年代に摩天楼時代を生み出した。この間,F.ライトは,独自の建築様式を開拓して有機的建築を唱え,数々の名作を造り,各国に熱烈な信奉者をつくって 20世紀の建築界の巨匠の一人となった。 30年代には主としてドイツで完成された 20世紀様式が導入され,W.グロピウスその他のすぐれたヨーロッパ建築家の移住や,ヨーロッパを抜いた工業力,技術力を背景に,第2次世界大戦後は,建築界の中心地の一つとなって,今日にいたっている。

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世界大百科事典(旧版)内のアメリカ建築の言及

【コロニアル・スタイル】より

…植民地で行われた建築や工芸の様式。ラテン・アメリカでは15世紀以来スペインが,また17~18世紀にはインドでイギリスが,母国の様式に各地の風土性や材料,技術を取りこんで,地方的特色ある様式を生み出した。一般にはアメリカの植民地時代(1620‐1820)の建築についていわれるもので,適当な伝統がなかった新開地に移民たちが故国の建築様式を簡略化しながら展開した各種のスタイルを総称していう。 初期には,住宅,倉庫,教会,集会所など,木や煉瓦などの身近な材料を用いた実用的施設が建てられた。…

※「アメリカ建築」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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