アリルアルコール(英語表記)allyl alcohol

デジタル大辞泉 「アリルアルコール」の意味・読み・例文・類語

アリル‐アルコール(allyl alcohol)

刺激臭のある無色液体酸化によりアクロレインになる。合成樹脂化学薬品などの製造中間体。化学式CH2=CHCH2OH

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改訂新版 世界大百科事典 「アリルアルコール」の意味・わかりやすい解説

アリルアルコール
allyl alcohol

最も簡単な不飽和アルコール。化学式CH2=CHCH2OH。無色で刺激臭のある液体。融点-129℃,沸点96.90℃,比重0.8520(20℃)。水,アルコールクロロホルムエーテル石油エーテルによく溶ける。数年間放置すると水に不溶の重合物が生成する。酸化すればアクロレイン,グリセリン,さらにギ酸,シュウ酸などに変わる。酸化アルミニウム,酸化亜鉛,銅などの高温接触作用によってプロピオンアルデヒドCH3CH2CHOに異性化する。そのほかオレフィンとしての反応とアルコールとしての反応が各種ある。製法としては,プロピレンCH2=CHCH3を塩素化して塩化アリルCH2=CHCH2Clをつくり,これをアルカリ加水分解する方法や,プロピレンからプロピレンオキシドを誘導し,リン酸リチウムを触媒として異性化する方法が知られている。

合成樹脂,香料,化学薬品などの製造の中間体として重要であり,また溶剤として,あるいは乾燥血液の製造,カタラーゼ作用の抑制などに用いられる。
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化学辞典 第2版 「アリルアルコール」の解説

アリルアルコール
アリルアルコール
allyl alcohol

2-propen-1-ol.CH2=CHCH2OH(58.08).プロペンを高温塩素化して塩化アリルをつくり,これをアルカリ加水分解すると70~80% の収率で得られる.また,プロペンオキシドをリン酸リチウムの存在下,気相で異性化させてつくる.刺激臭のある無色の軽い液体.沸点97 ℃.引火点32 ℃(開放),22 ℃(密閉).0.852.1.413.アルケンとしての付加反応,アルコールとしての縮合反応をするほか,金属酸化物の高温接触反応によってプロピオンアルデヒドに異性化し,酸化によってアクリルアルデヒド,さらにアクリル酸にかわる.グリセリンの製造原料,合成樹脂,香料,化学薬品の合成中間体として重要であり,また,溶剤,そのほかに用いられる.[CAS 107-18-6]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリルアルコール」の意味・わかりやすい解説

アリルアルコール
ありるあるこーる
allyl alcohol

不飽和アルコールの代表的なものの一つ。2-プロペノール、ビニルカルビノールともいう。無色の刺激臭のある液体。プロピレンの酸化により得られるプロピレンオキシド(1,2-エポキシプロパン)を経て合成する。引火しやすく蒸気は爆発性がある。酸化するとアクロレインやグリセリンとなる。合成樹脂、香料、化成品の原料として、また溶剤として用いられる。

[徳丸克己]

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世界大百科事典(旧版)内のアリルアルコールの言及

【グリセリン】より

…合成法はいずれもプロピレンを原料とするもので,代表的製造工程は次の4通りである。(1)プロピレンCH2=CH-CH3を500~530℃で塩素に結合させ塩化アリルCH2=CH-CH2Clとし,苛性ソーダを用い150℃,14kgf/cm2,pH2~10で加水分解してアリルアルコールCH2=CH-CH2OHとする。次に次亜塩素酸水HOClでクロロヒドリン化し,再びアルカリで加水分解してグリセリンとする。…

※「アリルアルコール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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