アルケシラオス(読み)あるけしらおす(英語表記)Arkesilāos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルケシラオス」の意味・わかりやすい解説

アルケシラオス
あるけしらおす
Arkesilāos
(前316/315―前242/241)

古代ギリシア懐疑派哲学者。小アジア、ピタネ出身。プラトン哲学形而上(けいじじょう)学的教説を排して古アカデメイアを離れ、新アカデメイアを設立した。懐疑論的「判断中止」epochēを哲学の目標と定めたが、ピロンピュロン)とは異なり、これを単に倫理(心の態度)としてではなく、純粋な理論と解し、むしろこれをソクラテス、プラトンの遺風とみた。知覚真偽に判別基準がないことから、ストア学派の把握表象を独断として退け、「把握不可能性」を原理とした。実生活では「理にかなったこと」を行動の基準とした点で、柔らかい懐疑論といえる。

山本 巍 2015年1月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルケシラオス」の意味・わかりやすい解説

アルケシラオス
Arkesilaos

[生]前315/前314. ピタネ
[没]前241/前240
ギリシアの哲学者。クラテスを継いでアカデメイア学頭となる。ソクラテス,ピュロン,ティモンに由来する懐疑論を導入 (→懐疑学派 ) 。エポケの説を採用し,およそ確実な知識というものの可能性を否定した。ただ実践的行動の規準として,エウロゴン (理にかなう) のみで十分であるとする。

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世界大百科事典(旧版)内のアルケシラオスの言及

【懐疑論】より

…初期にはピュロン(その名に由来するピュロニズムは懐疑論の別名となった)とその弟子ティモンTimōnがおり,彼らは何事についても確実な判断を下すのは不可能であるから,心の平静(アタラクシア)を得るためには判断の留保(エポケー)を実践すべきことを説いた。中期はプラトンゆかりの学園アカデメイアの学頭であったアルケシラオスArkesilaosとカルネアデスKarneadēsに代表される。彼らはストア主義を独断論として攻撃し,とくに後者は蓋然的知識で満足すべきことを説いた(アカデメイア派ないし新アカデメイア派の語も懐疑論者の代名詞として用いられることがある)。…

※「アルケシラオス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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