改訂新版 世界大百科事典 「アルセーヌルパン」の意味・わかりやすい解説
アルセーヌ・ルパン
Arsène Lupin
フランスの大衆小説家モーリス・ルブランMaurice Leblanc(1864-1941)の連作・冒険推理小説の主人公。フランス語の発音はリュパン。いくつもの顔を持ち,世間をあっと言わせるような鮮やかな手口の犯罪を重ねる一方,ときには名探偵として活躍し,しかも女性にはあくまでいんぎんな紳士である魅力的な人物。作者ルブランは最初《怪盗紳士アルセーヌ・ルパン》(1907)の主人公としてこの人物を創作し,以下《813》(1910),《水晶の栓》(1912)などの作品によって,世界的なベストセラー作家となった。ルパンは,ちょうどシャーロック・ホームズがイギリスを代表するように,フランス人の好みにぴったりの人物であり,フランス民衆が心に描く古き良き時代の夢だったと言える。
執筆者:滝田 文彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報