アレルギー性結膜炎

EBM 正しい治療がわかる本 「アレルギー性結膜炎」の解説

アレルギー性結膜炎

どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 ある特定の物質に過敏に反応するアレルギー反応が、目の結膜(けつまく)でおきる病気です。
 初期症状としては目やまぶたがかゆくなります。かゆくてたまらず目をこすることが多くなるので、結膜の充血や痛みもでてきます。悪化するとまぶたが腫(は)れ、結膜にゼリー状の目やにがでたり、涙が止まらなくなったり、ごろごろとした異物感などの症状がおきたりします。
 またこれに加えて、鼻水やくしゃみが止まらないといったアレルギー性鼻炎の症状が伴うこともあります。とくにアトピー体質の人や、もともと気管支喘息(ぜんそく)などアレルギー性の病気をもっている人などに多くみられます。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 アレルギーを引きおこす物質をアレルゲン(抗原)といいますが、アレルギー性結膜炎における代表的なアレルゲンには、花粉、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛、化学物質、食べもの、繊維(せんい)などがあります。
 アレルゲンによっては特定の季節にしか症状が現れず、これを季節性アレルギー性結膜炎(花粉性結膜炎)といい、1年中症状があるものは通年性アレルギー性結膜炎と呼ばれます。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]原因となっているアレルゲン物質を特定する
[評価]☆☆
[評価のポイント] アレルギー性結膜炎の治療は、アレルゲン物質の特定と除去が基本ですから、当然必要と考えられます。(1)(2)

■アレルゲン物質をできるだけ避けるようにする
[治療とケア]ハウスダスト、ダニはていねいに掃除機で吸い取る
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] ハウスダストやダニとアレルギー性結膜炎は強い関連があるという臨床研究があります。これらのアレルゲン物質を取り除くことはアレルギー性結膜炎の症状をやわらげるために必要とされています。(1)(2)

[治療とケア]布団は日光消毒し、その後掃除機をかける
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 布団とアレルギー性結膜炎は関連があるという臨床研究があります。布団などの寝具はダニの格好の住み家ですから、よく日光にあてて消毒し、掃除機でダニの死骸やえさとなるほこりを取り除くことは有効な方法です。(1)(2)

[治療とケア]花粉に対しては眼鏡やマスクをする
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 眼鏡などで目をアレルゲンから保護することは、アレルギー性結膜炎の症状改善に効果があるという臨床研究があります。(2)

[治療とケア]衣服についた花粉は家の外でよく払う
[評価]☆☆
[治療とケア]うがいや洗顔をする
[評価]☆☆
[評価のポイント] これらの方法がアレルギー性結膜炎の症状を緩和(かんわ)するという臨床研究は見あたりませんが、専門家の経験と意見から支持されています。

 



[治療とケア]ストレスを避け、睡眠不足や過労に注意する
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] ストレスを強く感じるできごと(家族の死、人間関係の対立など)とアレルギー性結膜炎は関連があるという臨床研究があります。避けることができるストレスは回避したほうがいいでしょう。(4)

[治療とケア]季節性の場合は、症状がでる前から予防的に抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の点眼を始める
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 非常に信頼性の高い臨床研究で、点眼用のレボカバスチン塩酸塩は、流行の季節の直前から始めて8週間用いることで約90パーセントの患者さんで目の症状が改善されたと報告されています。また、抗ヒスタミン薬の内服薬と同程度の効果があり、副作用は変わらないことが示されています。とくに花粉の量が多いときほど効果があるとしています。(5)
 クロモグリク酸ナトリウムやイブジラストでも同様の結果が確認されています。(3)(8)(9)

[治療とケア]症状が重い場合は、期間を限って副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド薬の点眼液と抗アレルギー薬を併用する
[評価]☆☆
[評価のポイント] いくつかの非常に信頼性の高い臨床研究によって副腎皮質ステロイド薬の点眼液はアレルギー性結膜炎の急性期の症状(かゆみ、充血など)を緩和することが確認されています。同時に、長期使用による副作用(眼圧上昇、白内障など)が問題となると報告しています。2週間の使用では副作用はほとんど認められず、約1週間で症状が緩和されたとしていますので、短期使用が望ましいでしょう。(6)(8)(10)

[治療とケア]免疫抑制薬
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 副腎皮質ステロイド点眼薬と同等またはそれ以上の効果が期待されています。なかでもタクロリムス水和物は、ステロイドが効きにくいステロイド抵抗性の重症例でも効果が得られることが質の高い臨床研究で確認されています。(11)~(16)


よく使われている薬をEBMでチェック

抗ヒスタミン薬点眼用
[薬名]リボスチン(レボカバスチン塩酸塩)(5)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]ザジテン(ケトチフェンフマル酸塩)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]パタノール(オロパタジン塩酸塩)(6)(7)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] これらの薬は非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。花粉をアレルゲンとする季節性の場合、レボカバスチン塩酸塩を花粉飛散の直前から8週間用いると、約90パーセントの患者さんで症状の改善が認められたとしています。ケトチフェンフマル酸塩では目のかゆみ、充血、涙目などの症状に対して80パーセント以上の人で効果があったとしています。

抗アレルギー薬点眼用
[薬名]インタール(クロモグリク酸ナトリウム)(8)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]アレギサール(ペミロラストカリウム)(17)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]ケタス(イブジラスト)(5)(18)
[評価]☆☆☆
[薬名]リザベン(トラニラスト)
[評価]☆☆
[評価のポイント] クロモグリク酸ナトリウムは、非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されていますが、症状緩和に関して、レボカバスチン塩酸塩に比べやや効果が弱いとされています。ペミロラストカリウムは、非常に信頼性の高い臨床研究によって季節性のアレルギー性結膜炎に対する予防効果が確認されています。イブジラストによっても充血などの症状が緩和されたことが臨床研究によって示されています。また、トラニラストの効果を示す臨床研究は見あたりませんが、専門家の意見や経験から支持されています。

副腎皮質ステロイド薬点眼用
[薬名]フルメトロン(フルオロメトロン)(10)
[評価]☆☆
[評価のポイント] フロオロメトロンの効果は臨床研究によって確かめられていませんが、類似薬であるヒドロコルチゾンは臨床研究によって効果が確認されています。副作用(眼圧の上昇、白内障)の可能性に注意し慎重に用いる必要があります。

免疫抑制薬点眼用
[薬名]パピロック(シクロスポリン)(11)~(15)
[評価]☆☆☆
[薬名]タリムス(タクロリムス水和物)(16)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 抗アレルギー薬点眼用だけで効果が不十分な、中等症以上の症例に対して推奨されています。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
治療の基本はアレルゲン物質の特定と除去
 アレルギー性結膜炎の治療の基本は、アレルゲン物質を特定することと除去することです。ハウスダストやダニなどがアレルゲンの場合は、住居の掃除や寝具の日光消毒などによって環境を整備し、アレルゲン物質を取り除くことで症状をコントロールすることができます。
 花粉がアレルゲンであれば、眼鏡などで目を保護することは症状改善に効果があります。
 また、ストレスによって症状が悪化するという報告もみられますから、避けることができるストレスは回避したほうがよいでしょう。

副腎皮質ステロイド薬は副作用に注意
 症状を緩和するのに有効なことが実証されている薬は何種類もあります。確実に、しかもすぐに効果がでる薬としては、副腎皮質ステロイド薬のフルメトロン(フルオロメトロン)がありますが、副作用(眼圧の上昇、白内障)の可能性もありますので、リボスチン(レボカバスチン塩酸塩)、ザジテン(ケトチフェンフマル酸塩)やパタノール(オロパタジン塩酸塩)などの抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬のほうが安心して使えると思います。
 症状がそれほど強くなく、効果がでるまでに少し時間がかかってもよい場合にはインタール(クロモグリク酸ナトリウム)やアレギサール(ペミロラストカリウム)の使用が勧められます。
 鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)を合併している場合には、経口の抗アレルギー薬を用いることもあります。

中等症以上の場合には免疫抑制薬点眼用を使用する
 抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の点眼用だけで効果が不十分である中等症以上の季節性アレルギー性結膜炎の患者さんに対しては、免疫抑制薬点眼用を追加投与することが推奨されます。2剤で症状の改善がみられない重症の患者さんに対しては、さらに短期間の副腎皮質ステロイド薬点眼用の追加が検討されます。

(1)Bilkhu PS, Wolffsohn JS, Naroo SA. A review of non-pharmacological and pharmacological management of seasonal and perennial allergic conjunctivitis.Cont Lens Anterior Eye. 2012 Feb;35(1):9-16.
(2)日本眼科学会,高村悦子. アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版).第6章 予防:セルフケア 第7章 メディカルケア.日眼学誌.114:829-870,2010.
(3)Takamura E.[Guidelines for the clinical management of allergic conjunctival disease (2nd edition): the point of the management with using eye drops]. Arerugi. 2014 Sep;63(8):1103-9.
(4)Kilpelainen M, Koskenvuo M, Helenius H, et al. Stressful life events promote the manifestation of asthma and atopic diseases. ClinExp Allergy. 2002;32:256-263.
(5)Sohoel P, Freng BA, Kramer J, et al. Topical levocabastine compared with orally administered terfenadine for the prophylaxis and treatment of seasonal rhinoconjunctivitis. J Allergy ClinImmunol. 1993;92:73-81.
(6)Uchio E. Treatment of allergic conjunctivitis with olopatadine hydrochloride eye drops. ClinOphthalmol. 2008 Sep;2(3):525-31.
(7)Mortemousque B, Bourcier T, Khairallah M, et al. Ketotifen Study Group. Comparison of preservative-free ketotifen fumarate and preserved olopatadine hydrochloride eye drops in the treatment of moderate to severe seasonal allergic conjunctivitis. J Fr Ophtalmol. 2014 Jan;37(1):1-8.
(8)Juniper EF, Guyatt GH, Ferrie PJ, et al. Sodium cromoglycate eye drops:Regular versus “as needed” use in the treatment of seasonal allergic conjunctivitis. J Allergy ClinImmunol. 94: 36-43, 1994.
(9)海老原伸行.季節性アレルギー性結膜炎におけるイブジラスト点眼予防投与の効果. あたらしい眼科. 20:259-262, 2003.
(10)Leonardi A, Papa V, Milazzo G, et al. Efficacy and safety of desonide phosphate for the treatment of allergic conjunctivitis. Cornea. 2002;21:476-481.429-434.
(11)Bertelmann E, Pleyer U. Immunomodulatory therapy in ophthalmology-is there a place for topical application? Ophthalmologica. 218:359-367, 2004.
(12)Cetinkaya A, Akova YA, Dursun D, et al. Topical cyclosporine in the management of shield ulcers. Cornea. 23:194-200, 2004.
(13)Pucci N, Novembre E, Lombardi E, et al. Long eyelashes in a case series of 93 children with vernal keratoconjunctivitis. Pediatrics. 115:e 86-91, 2005.
(14)Strong B, Farley W, Stern ME, Pflugfelder SC. Topical cyclosporine inhibits conjunctival epithelial apoptosis in experimental murine keratoconjuncti- vitis sicca. Cornea. 24:80-85, 2005.
(15)海老原伸行.免疫抑制点眼薬によって変わる春季カタルの治療. 日本の眼科. 80:1155-1159, 2009.
(16)Fukushima A, Ohashi Y, Ebihara N, et al. Therapeutic effects of 0.1% tacrolimus eye drops for refractory allergic ocular diseases with proliferative lesion or corneal involvement. Br J Ophthalmol. 2014 Aug;98(8):1023-7.
(17)Fujishima H, Fukagawa K, Tanaka M, et al. The effect of a combined therapy with a histamine H1 antagonist and a chemical mediator release inhibitor on allergic conjunctivitis.Ophthalmologica. 2008;222(4):232-9.
(18)Sakuma K, Toshida H, Honda R, et al. Effects of topical application of ibudilast for seasonal allergic conjunctivitis in patients wearing soft contact lenses. Eye Contact Lens. 2009 Sep;35(5):251-4.

出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報

内科学 第10版 「アレルギー性結膜炎」の解説

アレルギー性結膜炎(その他のアレルギー性疾患)

定義
 アレルギー性結膜疾患(広義のアレルギー性結膜炎)はⅠ型アレルギーが関与する結膜の炎症疾患で,何らかの自他覚症状を伴うもの,と定義される(アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン編集委員会,2010).一連のアレルギー反応のメカニズムは,アレルギー性鼻炎,喘息,アトピー性皮膚炎などのアトピー性疾患と類似している点が多い.
分類
 臨床像の違いから,眼瘙痒感,充血を主症状とする季節性アレルギー性結膜炎および通年性アレルギー性結膜炎と,結膜の増殖性変化や角膜上皮障害を伴う春季カタル(vernal keratoconjunctivitis),アトピー性角結膜炎(atopic keratoconjunctivitis),巨大乳頭結膜炎(giant papillary conjunctivitis)に分類される.
原因
 スギ花粉症などの季節性アレルギー性結膜炎では,樹木や草花の花粉がアレルゲンとなっており,花粉の飛散時期に症状が出現し,花粉飛散量の増加とともに症状が悪化する.通年性アレルギー性結膜炎や春季カタルは,ダニ,カビ,ハウスダストがアレルゲンとして関与している.アトピー性角結膜炎は,これらのアレルゲンに加え,眼瞼の搔爬行動も悪化の一因と考えられている.
病態
 季節性および通年性アレルギー性結膜炎ではⅠ型アレルギー反応の即時相が主体である.涙液中に外界から飛入したスギ花粉などのアレルゲンが結膜組織中のマスト細胞上の抗原特異的IgE抗体を架橋すると脱顆粒が起こり,ヒスタミンをはじめとするケミカルメディエーターが結膜局所に遊離される.おもにヒスタミンが結膜の血管や三叉神経のC線維の自由終末に存在するヒスタミンH受容体に結合し,充血,瘙痒感を引き起こす.また,この一連の反応によって,結膜下の血管へサイトカインや接着分子が働きかけ,おもに好酸球が結膜上皮中や涙液中に浸潤してくる. 春季カタルなどの重症型アレルギー性結膜疾患における結膜の増殖性変化や角膜上皮障害形成の病態には,活性化好酸球や組織傷害性蛋白の関与が考えられる.これらの患者の涙液や結膜には,活性化好酸球が多数浸潤し,角膜障害が重症になるほど活性化好酸球の浸潤が急激に増加する.
臨床症状
1)季節性および通年性アレルギー性結膜炎:
眼瘙痒感を特徴とし,充血,流涙,眼脂など急性結膜炎の臨床像を呈する.スギ花粉症などの季節性アレルギー性結膜炎では,毎年,樹木や草花の花粉の飛散時期に症状が出現する.ダニ,ハウスダストなどをアレルゲンとする通年性アレルギー性結膜炎では,季節を問わず症状が出現する.季節の変わり目に症状が悪化する場合が多い.細隙灯顕微鏡所見では,眼瞼結膜の乳頭,充血,腫脹,濾胞と,眼球結膜には充血,浮腫を認める.所見の程度は,結膜炎の重症度によりさまざまである.
2)春季カタル:
アトピー体質の学童,特に男児に好発する.通年性アレルギー性結膜炎と症状は類似するが,悪化時には,激しい眼瘙痒感や,角膜上皮障害のため,異物感や眼があけていられないほどの眼痛や視力低下を自覚する.上眼瞼結膜の石垣状乳頭増殖(図10-34-4)や角膜輪部にはTrantas斑とよばれる炎症細胞の浸潤による白色の小隆起や堤防状隆起など結膜の増殖性変化が認められる.また,角膜には,点状表層角膜炎,潰瘍底に堆積物が沈着し遷延性の角膜上皮欠損を伴うシールド(shield:盾型)潰瘍(図10-34-5),潰瘍内の堆積物が蓄積し角膜面よりやや隆起して観察される角膜プラークなど多彩な所見を呈する.
3)アトピー性角結膜炎:
アトピー性皮膚炎に合併して起こる慢性の角結膜炎で,顔面,なかでも眼瞼を中心に皮膚炎の増悪化が起こる思春期以降のアトピー性皮膚炎患者に認められる場合が多い.眼瞼結膜には白色の瘢痕を伴う場合が多く,乳頭の大きさはさまざまである.また,アトピー性眼瞼炎には,ブドウ球菌,連鎖球菌や単純ヘルペスウイルスなどの感染を伴いやすく,これらも角結膜所見の悪化に関与することが推測される.
4)巨大乳頭結膜炎:
コンタクトレンズ装用,義眼,手術時の縫合糸などの物理的刺激とコンタクトレンズに付着した蛋白などアレルゲンにより発症する.上眼瞼結膜に直径1mm以上の比較的均一なサイズの巨大乳頭を認めることを特徴とする.自覚症状は,アレルギー性結膜炎に類似し,眼瘙痒感,眼脂が主体である.コンタクトレンズ装用後に眼瘙痒感が出現し,重症になるとコンタクトレンズの上方へのずれがおこるなど,コンタクトレンズ装用と症状の発現に関連がみられる.
診断
 診断のために,臨床症状の確認,Ⅰ型アレルギー素因の有無,結膜局所でのⅠ型アレルギー反応の証明を行う.結膜上皮や眼脂中には,通常,好酸球は存在しないことから,スメア中に好酸球が認められれば確定診断となる.眼局所でのⅠ型アレルギー素因の検査には,涙液中総IgE検査が簡便である(庄司ら,2012).アレルゲンの特定には,皮膚テストやRAST法,CAP法,MAST法,AlaSTAT法などの血清学的検査が用いられている.
鑑別診断
アレルギー性結膜炎と鑑別すべき疾患は,結膜の充血や眼脂を主症状とする細菌性結膜炎や流行性角結膜炎を代表とするウイルス性結膜炎などの感染性の急性結膜炎である.角膜潰瘍を伴う春季カタルやアトピー性角結膜炎は,細菌性角膜潰瘍や角膜ヘルペスとの鑑別が難しい場合がある.角膜擦過物を用いた病原体検索が的確な診断のために必要である.
予防・治療
1)セルフケア:
アレルゲンを回避する工夫はアレルギー性結膜炎の予防や症状の軽減の効果がある.スギ花粉によるアレルギー性結膜炎に対し,花粉情報の活用,花粉防御用メガネの装用,人工涙液による洗眼は有用である.
2)治療:
抗アレルギー点眼薬を第一選択とし,症状がおさまらない場合は,ステロイド点眼薬を併用する.抗アレルギー点眼薬には,メディエーター遊離抑制薬とH1受容体拮抗薬の作用を有するものがある.スギ花粉症では,花粉飛散がピークになる前から抗アレルギー点眼薬を開始する「初期療法」により,花粉飛散時期の症状を軽減し,症状発現期間の短縮が認められる.
 春季カタルの治療には,抗アレルギー点眼薬,免疫抑制点眼薬,ステロイド点眼薬が用いられる.眼瘙痒感,充血,眼脂などの炎症症状が強く,角膜にも所見を呈する中等症以上の症例では,抗アレルギー点眼薬,免疫抑制点眼薬,ステロイド点眼薬で開始し,巨大乳頭の縮小化や角膜上皮障害の軽減などの改善がみられれば,ステロイド点眼薬の回数や濃度を漸減する.免疫抑制点眼薬には,0.1%シクロスポリン点眼薬と0.1%タクロリムス点眼薬がある.0.1%シクロスポリン点眼薬は重症な角結膜所見の改善にはステロイド点眼薬との併用で1カ月程度と効果の発現は緩徐だが,安全性は高い(高村ら,2011).一方,0.1%タクロリムス点眼薬は,ステロイド抵抗性の重症例に対しても短期間で治療効果が得られている.ステロイド点眼薬は,副作用として眼圧上昇を伴う場合があり,ステロイド点眼薬投与中は,定期的な眼圧測定を含めた眼科での経過観察が必要である. 薬物治療によっても角膜所見の悪化が継続する場合には,乳頭切除や角膜プラーク除去などの手術的治療を行う場合もある.[高村悦子]
■文献
アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン編集委員会:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版).日眼会誌,114: 831-870, 2010.庄司 純,内尾英一,他:アレルギー性結膜疾患診断における自覚症状,他覚所見および涙液総IgE検査キットの有用性の検討.日眼会誌,116: 485-493, 2012.
高村悦子,内尾英一,他:春季カタルに対するシクロスポリン点眼液0.1%の全例調査.日眼会誌,115: 508-515, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

食の医学館 「アレルギー性結膜炎」の解説

あれるぎーせいけつまくえん【アレルギー性結膜炎】

《どんな病気か?》


 アレルギー性結膜炎(けつまくえん)は、アレルギー反応によって目の粘膜(ねんまく)に炎症が起こった状態で、アレルギー性鼻結膜炎(びけつまくえん)とも呼ばれます(「アレルギー性鼻炎」参照)。目のかゆみ、流涙(りゅうるい)、めやに、異物感、結膜充血(けつまくじゅうけつ)、まぶたの腫(は)れなどの症状が現れます。なかでも、かゆみが特徴的で、アレルギー性鼻炎の症状をともなうことがしばしばあります。

《関連する食品》


〈カテキン、ケルセチンを含む緑茶パワー〉
○栄養成分としての働きから
 フラボノイドの一種のカテキンには、細胞の老化をうながす活性酸素の働きを抑制する働きがあり、やはりフラボノイドの一種ケルセチンには、毛細血管を丈夫にする働きがあります。緑茶をはじめ烏龍茶や紅茶には、この両方が含まれています。
 抗アレルギー作用のあるビタミンB6を含む食品には豚もも肉、レバー、サケ、サバなどがあり、免疫システムにも影響があるカロテンやレチノールを含む食品には、ホウレンソウ、コマツナ、カボチャやレバー、ウナギなどがあります。ギンナンに含まれるギンコライドにも、アレルギー改善の効果が確認されています。

出典 小学館食の医学館について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアレルギー性結膜炎の言及

【結膜】より

…一般細菌による結膜炎は,抗生物質の発達とともに少なくなり,経過良好のものが多い。アレルギー性結膜炎は,花粉やダニによるものがあり,季節的発生をみる。鼻炎とともに強いかゆみを伴う。…

※「アレルギー性結膜炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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