アワゴケ(英語表記)Callitriche japonica Engelm.

改訂新版 世界大百科事典 「アワゴケ」の意味・わかりやすい解説

アワゴケ
Callitriche japonica Engelm.

庭などの湿った土地に生える雑草的なアワゴケ科一年草で,小さく繊弱。全草無毛。茎は細く,分枝しながら地表をはい,先端部は斜上から直立する。葉は対生し,倒卵形で,小さく,葉腋(ようえき)に1個の微細な花をつける。花は淡緑色で目立たず,雄花は1本のおしべ雌花は1本のめしべから成り,花弁も萼片もない。実は4個の種子を入れる。関東より西,四国,九州に分布し,特に利用されることのない,まったく目だたない雑草である。コロニーをつくって生育している状態を,“泡立っている”ことに見立ててアワゴケ(泡苔)の名がついた。

 アワゴケ科Callitrichaceaeはアワゴケ属1属から成り,多年生で水田雑草になったり,沼地などにも生じる水草であるミズハコベC.fallax Petrovが日本に分布する。しかし全種数は20種あまりの小さな植物群で,系統的な類縁はよくわかっていない。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アワゴケ」の意味・わかりやすい解説

アワゴケ
あわごけ / 泡苔
[学] Callitriche japonica Engelm.

アワゴケ科(APG分類:オオバコ科)の一年草。多くの枝に分かれ、高さ1~4センチメートル、小さく繊弱。葉は小さく倒卵形で長さ3~6ミリメートル。初夏、葉のわきに雄花と雌花をつける。雄花は2枚の包葉と1本の雄しべ、雌花は2枚の包葉と1本の雌しべのみからなる。果実は4個の分果に分かれる。宮城県以西から沖縄、台湾に分布する。小さな葉の重なったようすが泡を思わせるので泡苔の名がある。なおアワゴケ科は、1属25種ほどからなる小さな科で世界に広く分布する。花被(かひ)はないが、胚(はい)や胚乳のでき方がシソ目に一致するので、合弁花類として扱われる。

山崎 敬 2021年8月20日]

 APG分類ではアワゴケ科はオオバコ科に合併され、科名は消滅した。

[編集部 2021年8月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android