イイズナ(英語表記)weasel
Mustela nivalis

改訂新版 世界大百科事典 「イイズナ」の意味・わかりやすい解説

イイズナ
weasel
Mustela nivalis

おもにネズミ類を捕食する食肉目中最小のイタチ科の哺乳類。イタチに似るが,はるかに小さく,尾はごく短い。きゃしゃで優美な姿をもつ。日本(北海道と青森,山形など本州北部)を含むユーラシア,北アメリカ,アフリカに分布する。体長13.7~25.5cm,尾長1.6~3.5cm。体色は背側が茶色,腹側が白色で,その境界は不明りょう。尾は先端まで茶色,日本など分布域の北部および山地にすむ個体は,冬には全身白色化する。低地から山地までの耕作地,草原,低木林,森林,ときには穀物小屋など多様な場所に生息する。雌が出産用の巣をつくる以外は,ふつう一定の巣をもたず,おもな獲物であるネズミを求めて移動する。単独性で,自然状態では昼夜を問わず活動する。しなやかな体を敏しょうに動かし,ハタネズミハツカネズミを追って地下の巣穴に侵入して捕食する。捕獲の際には獲物の首筋にかみついて放さない。食物はネズミ類のほか,ウサギ鳥類なども食べる。雌は年に1~2回,1産4~6子を生む。天敵はフクロウ,キツネなど。

 同属近縁種で,北海道から本州中部の山岳地帯に分布するオコジョM.ermineaは姿と暮し方がイイズナによく似ているが,体が大きく,尾の先端が黒いことで区別できる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イイズナ」の意味・わかりやすい解説

イイズナ
いいずな
least weasel
[学] Mustela nivalis

哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科の動物。北アフリカと西ヨーロッパからアジア北東部に分布し、日本では北海道と東北地方および中部地方の高山にいる。コエゾイタチともいわれる。北アメリカ産のアメリカイイズナM. rixosa同種にまとめる学者もいる。体長15~20センチメートル、尾長2~3センチメートル、体重10グラムほどで、食肉目のなかでもっとも小さい。夏毛は背面が黒褐色で腹面は純白、冬毛は全身白色となる。主食はネズミ類で、体が小さいためにネズミの穴に自由に入り込むことができる。そのほかカエル、ヘビなども捕食し、ウサギも攻撃するので、これらの天敵として重要である。ネズミが多い場所なら森林、草原を問わず生息し、人家の近くにも姿を現す。交尾、出産は春から夏の間で、年2回以上の出産もあるといわれる。1回の産子数は3~9頭。毛皮は質が劣り、小さいので利用されない。

[朝日 稔]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「イイズナ」の意味・わかりやすい解説

イイズナ

コエゾイタチとも。食肉目中最小でイタチ科に属する。雄は体長16cm,尾2.5cmほど。雌はやや小型。北米,ユーラシアの北部に広く分布。日本では北海道と青森県,山形県に産する。夏は褐色,冬は全身白色となる。性質は荒く,行動は敏捷(びんしょう)。ネズミ,小鳥,昆虫などを捕食する。1腹3〜7子。

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