イェンゼン(Adolf Ellegard Jensen)(読み)いぇんぜん(英語表記)Adolf Ellegard Jensen

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

イェンゼン(Adolf Ellegard Jensen)
いぇんぜん
Adolf Ellegard Jensen
(1899―1965)

ドイツの民族学者。フランクフルト大学教授。レオ・フロベニウスの後継者で、文化形態学派の指導者だった。アフリカことにエチオピアと、東部インドネシアのセラム島で実地調査を行い、なかでもセラム島のウェマーレ人の社会で採集したハイヌウェレ神話は、初期栽培民文化の世界像について彼が構想をたてるきっかけとなった。殺された神の死体から作物が発生したという形式の神話や、それと関連した祭儀の比較研究によって、イェンゼンは、生と死、生殖殺害、栽培植物、月、女などの相互に意味連関をもつ基本的特徴から構成される、まとまった一つの世界像を再構成し、首狩り、食人俗、成年式などの現象も、この世界像との関連で理解しようとした。この初期栽培民文化の世界像の構想については、批判もあるが、示唆に富む理念型である。

 イェンゼンはそのほか神話と儀礼との関係、神観念の諸類型など、民族の宗教について貢献が大きい。主著『殺された神』Die gegötete Gottheit(1966。邦訳『殺された女神』)、『未開民族における神話と祭儀』Mythos und Kult bei Naturvölkern(1951)。

大林太良 2018年11月19日]

『大林太良他訳『殺された女神』(1977・弘文堂)』

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