イグナティオスの手紙(読み)イグナティオスのてがみ(英語表記)Epistle of Ignatius

改訂新版 世界大百科事典 「イグナティオスの手紙」の意味・わかりやすい解説

イグナティオスの手紙 (イグナティオスのてがみ)
Epistle of Ignatius

アンティオキアの第2代監督イグナティオス官憲によって逮捕され,ローマへ護送される途次に記した七つの手紙の総称。まずスミュルナにおいてエペソ(エフェソス),マグネシアトラレス,ローマの諸教会にあてて,次にトロアスにおいてフィラデルフィアとスミュルナの教会およびスミュルナの監督ポリュカルポスにあてて書かれた。これらに共通している内容は,諸教会の好意に対する感謝,教会の一致団結の勧め,仮現説(地上のイエスの生涯や受難を現実ではなく単なる仮象とする説)とユダヤ教化への警告,シリア教会に使節を派遣することの依頼などである。ローマあての手紙では,信徒たちに彼の助命運動を止めて,キリストの受難にあずかる殉教の死を遂げさせてくれるよう頼む。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のイグナティオスの手紙の言及

【使徒教父】より

…伝統的には〈使徒たちの教えを受けた教父たち〉という意味で用いられている。初期においては《バルナバの手紙》《クレメンスの第1の手紙》《クレメンスの第2の手紙》《ヘルマスの牧者》《イグナティオスの手紙》《ポリュカルポスの手紙》《ポリュカルポスの殉教》の7書のみが含まれていたが,19世紀になってから新たに《パピアスの断片》《クアドラトゥスの断片》《ディオグネトスへの手紙》《ディダケー》が加えられた。 これらのうち《ディオグネトスへの手紙》のみは,本来護教文学と呼ばれる一連の文書に属するのであるが,11章1節で著者が自分のことを〈使徒たちの弟子〉と呼んでいるために使徒教父文書に入れられたと思われる。…

※「イグナティオスの手紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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