イケチョウガイ(読み)いけちょうがい(英語表記)Schlegel's freshwater pearl mussel

改訂新版 世界大百科事典 「イケチョウガイ」の意味・わかりやすい解説

イケチョウガイ (池蝶貝)
Hyriopsis schlegelii(=Sinohyriopsis schlegelii

淡水真珠養殖の母貝とするイシガイ科の大型二枚貝。長さ23.5cm,高さ13cm,膨らみ5.5cmに達する。殻はまるみのある菱形厚いが,膨らみは弱い。殻皮は幼貝では黄緑色であるが成長すると黒色になる。成長脈のほか幼時には弱い波状のしわが中央部にある。また背上には翼状の扁平な突起があるが,成長すると失われる。内面真珠光沢が強く青白色琵琶湖水系の特産種。近年,霞ヶ浦に移殖されている。稚貝は水深3m以浅,成貝は水深10m,まれに水深30mくらいの砂泥底にすむ。産卵期は4~6月で,この期にグロキディウム幼生を外鰓がいさい)の保育囊に生じ,これが水中に放出されると,モロコ,ギギなどの魚のえらひれなどに付着する。11~25日を経て殻長0.5mmほどになると離れて水底に落ち,その後年に1.4cmくらい成長する。淡水真珠養殖の母貝とされるほか,殻は貝細工の材料となる。近似種のヒレイケチョウガイH.cumingii(=S.cumingii)が中国長江に分布するが,この遺存種がイケチョウガイだと考えられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イケチョウガイ」の意味・わかりやすい解説

イケチョウガイ
いけちょうがい / 池蝶貝
Schlegel's freshwater pearl mussel
[学] Hyriopsis schlegelii

軟体動物門二枚貝綱イシガイ科の二枚貝。琵琶湖(びわこ)特産の淡水種で、淡水真珠養殖のため霞ヶ浦(かすみがうら)にも移植されて増殖されている。水深2メートルぐらいの湖底にすみ、泥中に潜る。殻長23.5センチメートル、殻高13センチメートルになり、方形で膨らみは弱く殻は厚い。殻皮は幼いうちは黄緑色であるが、成長すると黒漆色になる。また幼時は背縁上に翼状の突起があるが、成長すると失われる。殻頂近くに斜行するうねが数本ある。殻内面は白い真珠光沢があり、主歯は大きく後側歯も長く明らか。5~7月ごろ親貝の育児嚢(のう)内にグロキディウム幼生を生じ、これが水中に出て、タナゴ、モロコ、ヒガイなどのえらに付着して成長し、10日後には離れて着底する。淡水真珠養殖の母貝として用いられるほか、殻は貝細工の材料とされる。琵琶湖地方ではオンガイという。

[奥谷喬司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イケチョウガイ」の意味・わかりやすい解説

イケチョウガイ
Hyriopsis schlegeli

軟体動物門二枚貝綱イシガイ科。殻長 23.5cm殻高 13cm,殻幅 5.8cmの大型種。殻はやや厚く,ふくらみは弱く,菱形で後方へ広くなる。前端は丸く,後端は斜めにまっすぐ長く,背縁もまっすぐで,幼貝ではその上に翼状の大きい突起がある。殻皮は黄緑色であるが,成長すると黒くなる。内面は真珠光沢が強く,噛み合せに大きい擬主歯と長い後側歯がある。5~7月に親貝の外鰓の育児嚢に幼貝グロキジウムが成育し,水中に泳ぎ出て淡水魚に 10日間ほど付着寄生し,その後底生生活に入る。琵琶湖固有種。淡水真珠養殖の母貝となるほか,殻は貝細工の材料となる。琵琶湖地方では近縁種カラスガイをメンガイといい,本種をオンガイといっている。

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百科事典マイペディア 「イケチョウガイ」の意味・わかりやすい解説

イケチョウガイ

イシガイ科の大型二枚貝。大津付近でこの貝をオンガイ,カラスガイをメンガイという。殻は厚く,長さ20cm,高さ12cm,幅5cmに達する。殻表は白色,その上は波状のしわをもつ黒色の殻皮でおおわれる。幼貝は淡黄褐色,背上に大きい翼状突起がある。琵琶湖特産だが,近年霞ヶ浦に移殖された。成貝は水深10〜30mくらいの砂泥底にすむ。4〜6月が産卵期。淡水養殖真珠の母貝となる。殻は貝細工の材料。
→関連項目真珠貝養殖真珠

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世界大百科事典(旧版)内のイケチョウガイの言及

【カラスガイ(烏貝)】より

…その色からカラスガイの名がついた。琵琶湖地方では淡水真珠養殖の母貝となる殻の厚いイケチョウガイ(イラスト)をオンガイというのに対して,殻の薄いこの種をメンガイと呼んで,雌雄と考えていた。また,幼貝のときは背上に平たい板状の突起があるが,これも成長すると失われる。…

【真珠】より

…農水省では,(1)真珠養殖事業法にいう真珠とは,生きた真珠貝の中で球状または半球状(多少の変形を含む)に形成される代謝生産物であって,かつ,この外見しうる部分の主たる構成物質が,真珠貝の真珠層と等質であるものをいい(その内部に貝殻質から作られた核を含むか否かは関係ない),(2)この場合,真珠貝中におけるその形成契機に,まったく人為的な要因を含まないものを天然真珠といい,その契機を人為的に与えられるものを養殖真珠というと定めている。ここで真珠貝と称しているものは,真珠を作る貝を意味し,海産の貝ではアコヤガイ,クロチョウガイ,シロチョウガイ,マベ,アワビ,淡水産の貝ではイケチョウガイなどすでに産業に用いられている貝類をさしている。これ以外にも,イガイ,カキ,ドブガイなど天然真珠を生成する貝は1000種以上あるといわれている。…

※「イケチョウガイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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