イコノスタシス(英語表記)ikonostasis

デジタル大辞泉 「イコノスタシス」の意味・読み・例文・類語

イコノスタシス(iconostasis)

教会にある、内陣信者が祈祷する場所を隔てるための壁。イコン聖画像)を掛ける。聖障せいしょう。聖画壁。イコノスタス

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改訂新版 世界大百科事典 「イコノスタシス」の意味・わかりやすい解説

イコノスタシス
ikonostasis

東方正教会の聖堂内において,東端の至聖所と会衆席(聖所)とを分ける一種の仕切りで,ここにイコンを掛ける。イコノスタシオンikonostasionともいう。ギリシア語で〈イコンを掲げる衝立〉の意。ロシア語ではイコノスタースikonostas。〈聖障〉〈聖柵〉と訳される。建物の本体とは別に,格子組みの木枠に板を張って作った大型のパネル状のものが普通で,幅は堂内の左右の側壁に接し,高さは天井近くにまで達する。中央に,垂幕(パラペタスマ)と腰高の扉をもつ〈美しの門(オレア・ピリ)〉もしくは〈王門〉と呼ばれる開口部を備える(さらに左右に小規模の開口部を配し,合わせて三つの門をもつ場合もある)。この門を出入りしながら司祭が執り行う儀礼によって,聖なる世界(至聖所)と現世(会衆席)とが結ばれる。イコンは会衆席に面する側に一定の秩序のもとに掛け並べられ,最上段から,旧約聖書族長と預言者たち,次に十二祭礼および復活前後の主題,さらに〈デイシス〉や諸聖人像と続くのが基本的配列である。イコノスタシスの成立時期は9~10世紀ころといわれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イコノスタシス」の意味・わかりやすい解説

イコノスタシス
ikonostasis

ビザンチン聖堂建築において,祭壇部と一般信者席とを分ける壁で,14~15世紀以来一つないし三つの扉がつけられ,5ないし7段の木製イコンで飾られたためにこの名がある。中央にデエシスが描かれ,その上には教会祝祭や預言者たち,その下にはキリスト半身像やマリア,聖人やその聖堂が寄進されたことを祝うイコンが掛けられる。現在でもギリシア正教などビザンチンの流れを引くキリスト教の聖堂に設けられている。

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世界大百科事典(旧版)内のイコノスタシスの言及

【祭壇】より

…祭壇の置かれる至聖所を囲み,俗人の立入りを禁止するために,障壁(障柵)が祭壇の周囲に設けられることがある。東方教会では,これがイコノスタシスとして発達し,そこに数々のイコンが飾られた。 祭壇は祭壇布で覆われ,その上を飾る祭具には,祭壇十字架,祭壇燭台,聖櫃(せいひつ)(タバナクルtabernacle(英語))がある。…

※「イコノスタシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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