イソメラーゼ(読み)いそめらーぜ(英語表記)isomerase

デジタル大辞泉 「イソメラーゼ」の意味・読み・例文・類語

イソメラーゼ(isomerase)

異性化酵素

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソメラーゼ」の意味・わかりやすい解説

イソメラーゼ
いそめらーぜ
isomerase

生体分子異性体転換させる反応を触媒する一群酵素総称。異性化酵素ともいう。たとえばアミノ酸の一つであるアラニンには、D-アラニンとL-アラニンの二つの光学異性体が存在するが、アラニンラセマーゼというイソメラーゼはD型をL型に、またはその逆にL型をD型へ変える反応を触媒する。

 1961年に国際生化学連合(現在は国際生化学・分子生物学連合)が提案した酵素の分類命名法で、イソメラーゼは第5類に分類され、さらにこれを反応様式の違いによって次の5種類に分けている。

(1)基質分子中の1個の不斉炭素に結合した官能基の立体配位を転換させるもの。ラセマーゼやエピメラーゼのほか、前述のアラニンラセマーゼも含まれる。

(2)二重結合を含む基質の幾何異性体のシス、トランス相互変換を行うもの。たとえばマレイン酸イソメラーゼは、マレイン酸とフマル酸を相互変換する。

(3)基質が分子内の酸化還元を伴って異性化するもの。トリオースリン酸イソメラーゼはこれに含まれる。

(4)基質分子内でアシル基アミノ基リン酸基などの基を他の部位へ移すもの。ムターゼとよばれる。たとえばフォスフォグリセリン酸ムターゼは、グリセリンの2位のヒドロキシ基に結合したリン酸基を3位へ移す。

(5)基質分子内で脱離反応付加反応を行うもの。ミオイノシトール-1-リン酸シンターゼがこれに含まれる。

[笠井献一]

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化学辞典 第2版 「イソメラーゼ」の解説

イソメラーゼ
イソメラーゼ
isomerase

各種分子内異性化反応を触媒する酵素の総称で,以下に大別される.(1)ラセマーゼおよびエピメラーゼ:アミノ酸,ヒドロキシ酸などのDL相互変換およびD-グルコースD-ガラクトースなどエピマー相互変換を触媒する.(2)シス-トランスイソメラーゼ:マレイン酸フマル酸のようなシストランス変換を触媒する.(3)分子内オキシドレダクターゼ:アルドースケトース相互変換ならびにケトエノール相互変換を触媒する.(4)分子内トランスフェラーゼ:分子内のアシル基またはリン酸基などの転移を触媒する.(5)分子内リアーゼ.[CAS 9013-19-8]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イソメラーゼ」の意味・わかりやすい解説

イソメラーゼ
isomerase

異性化酵素と訳す。異性化反応を触媒する酵素の総称で,国際生化学連合の酵素委員会が決めた酵素分類の主群の一つ。この種の酵素反応では反応の前後で,分子中の原子の組換えのみがあり,原子の出入りはない。 (1) 光学的異性化反応の例は,D-乳酸 ⇔ L-乳酸を行うラセミアーゼ。 (2) 糖の炭素原子につくH と OH の反転 (エピ化) を触媒するエピメラーゼの例は,D-リブロース-5-リン酸 ⇔ D-キシルロース-5-リン酸-3-エピメラーゼ。 (3) 原子または原子団の分子内転位を触媒する例は,ブドウ糖-6-リン酸と果糖-6-リン酸の転換を促す六炭糖リン酸イソメラーゼなど。

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栄養・生化学辞典 「イソメラーゼ」の解説

イソメラーゼ

 異性化酵素ともいう.化合物を異性体にする酵素の総称.多くの反応の種類がある.例えば,ラセミ化する酵素であるラセマーゼ,アルドースをケトースにする酵素であるイソメラーゼ(例えばグルコースをフルクトースに変えるグルコースイソメラーゼ)など.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「イソメラーゼ」の意味・わかりやすい解説

イソメラーゼ
isomerase

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世界大百科事典(旧版)内のイソメラーゼの言及

【異性化酵素】より

…イソメラーゼともいう。アミノ酸,糖,その他の有機化合物のラセミ化,エピ化などの反応を触媒する酵素の総称である。…

※「イソメラーゼ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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