イットリウム

精選版 日本国語大辞典 「イットリウム」の意味・読み・例文・類語

イットリウム

〘名〙 (yttrium) 希土類元素一つ。記号Y 原子番号三九。原子量八八・九〇五八。一七九四年、フィンランドガドリン発見灰色金属で三価の化合物をつくる。ガドリン石モナズ石などに含まれる。〔舎密開宗(1837‐47)〕

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デジタル大辞泉 「イットリウム」の意味・読み・例文・類語

イットリウム(yttrium)

希土類元素の一。単体は灰黒色の金属。元素記号Y 原子番号39。原子量88.91。

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化学辞典 第2版 「イットリウム」の解説

イットリウム
イットリウム
yttrium

Y.原子番号39の元素.電子配置[Kr]4d15s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素イットリウム族の一つ.当初,発見者のJ. Gadolinは元素名を,鉱物ガドリン石の産地スウェーデンの村名ytterbyにちなんでytterbiumとしたが,のちにyttriumに短縮され,ytterbiumは70番元素に与えられた.宇田川榕菴は,天保8年(1837年)に出版した「舎密開宗」で依多母(イトリュウム)としている.原子量88.90585(2).質量数89(100%)の安定同位体と,質量数76~108までの放射性同位体が知られている.1794年にJ. Gadolinにより発見され,分離は,1843年,C.G. Mosanderによりなされた.ガドリン石,モナズ石ゼノタイムなどに含まれる.
地殻中の存在度20 ppm.埋蔵量一位は中国,ついでアメリカ,オーストラリア.灰色の金属でYF3のCa金属による還元で得られる.融点1522 ℃,沸点3338 ℃.密度4.47 g cm-3(六方晶系).標準電極電位 Y3+/Y-2.37 V.第一イオン化エネルギー6.38 eV.空気中では容易に酸化される.酸に可溶,アルカリに不溶.希土類元素に含めるが,外殻電子は4d15s2でdグループの元素.イオン半径は0.106 nm でDy,Hoに近い.酸化数3.DyやHoの化合物に似た性質を示す.化合物は一般に無色.希土類と同様に酸化物,フッ化物,シュウ酸塩,水酸化物などは水に不溶,塩化物,硫酸塩は水に易溶.イットリウムの水酸化物はランタンよりは弱いが,かなり強い塩基性をもっている.
YBa2Cu3O7(YBCO)は高温超伝導体の一つで,超伝導転移温度-93 K(-180 ℃).酸化イットリウムY2O3ユウロピウム賦活赤色蛍光体として,カラーテレビなどに多量に使用されている.Y2O3は可視光に透明なセラミックスの原料となる.Eu:Y2O2SはX線イメージインテンシファイア,YAG(yttrium aluminium garnet):Y3Al5O12はレーザー素子として有名である.YIG(yttrium iron garnet):Y3Fe5O12は,たとえば高周波用アイソレーターとして携帯電話の部品に用いられる.[CAS 7440-65-5]

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改訂新版 世界大百科事典 「イットリウム」の意味・わかりやすい解説

イットリウム
yttrium

周期表第ⅢA族に属する希土類元素の一つ。1794年フィンランドのガドリンJohann Gadolinは,スウェーデンのストックホルム近郊イッテルビーYtterby産の鉱物から新しい酸化物を発見し,産地にちなんでイッテルビアとよんだが,のちイットリア(イットリウムの酸化物の意)とよぶようになった。1843年スウェーデンのモサンデルCarl Gustav Mosanderはこのイットリアを3成分(イットリア,テルビア,エルビア)に分けることに成功し,その一つであるイットリアから得られた元素に旧名イットリウムを保留し,テルビア,エルビアから得られた2元素にそれぞれテルビウムエルビウムの名を与えた。主要鉱石はガドリン石,モナザイト,ゼノタイムなど。イットリウムの単体は灰色の金属で,展性,延性はあまりない。金属は,フッ化物YF3と塩化カルシウムを混合融解し,金属カルシウムおよびマグネシウムで還元してマグネシウムとの合金をつくり,これを蒸留してマグネシウムを除いて得る。空気中で容易に表面が酸化される。また,空気中では470℃,酸素中では400℃で発火する。熱水とは反応して,水を分解する。酸に溶けるが,アルカリには溶けない。化学的性質からは希土類元素中イットリウム族に分類される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イットリウム」の意味・わかりやすい解説

イットリウム
いっとりうむ
yttrium

周期表第3族に属し、希土類元素の一つ。1794年、フィンランドのガドリンによりストックホルム近郊のイッテルビーYtterby産の鉱石中からみいだされ、新元素の酸化物として初めイッテルビアとよばれた。これはのちに、イットリア、テルビア、エルビアの3種に分けられたが、そのうちのイットリアから新元素として確認されたのでイットリウムと命名された。おもな鉱石はガドリン石、モナズ石、ゼノタイムなど。銀白色の金属で、展性、延性はない。空気中で表面が酸化されやすい。熱水で分解され、酸に溶けるが、アルカリには溶けない。希土類元素のなかでは、化学的性質からイットリウム族として分類される。

[守永健一]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イットリウム」の意味・わかりやすい解説

イットリウム
yttrium

元素記号Y,原子番号 39,原子量 88.90585。周期表3族,希土類元素の1つ。天然にはイットリウム 89のみ存在する。単体は灰色の金属で,比重 5.51,融点 1509℃,沸点 2927℃。鉱物の種類は多いが,鉱石として重要なのはイットリウム鉱およびガドリン石。延性,展性はない。酸や熱水と反応して溶けるがアルカリには不溶。化学的性質はイオン半径の近いジスプロシウム,ホルミウムに似ている。イオンは無色で,フッ化物,シュウ酸塩,リン酸塩,水酸化物は水に難溶である。 1794年 J.ガドリンによって発見された。カラーテレビ用ブラウン管の赤色ケイ光体としての需要が多い。

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百科事典マイペディア 「イットリウム」の意味・わかりやすい解説

イットリウム

元素記号はY。原子番号39,原子量88.90584。融点1520℃,沸点3388℃。希土類元素の一つとして扱われることが多い。単体は灰色の金属。空気中で表面は容易に酸化される。酸に溶けるがアルカリには不溶。化合物の多くは無色。酸化物や,他の元素を加えた酸化物には,セラミックスや電子材料に多くの用途がある。ユーロピウムなどを加えた酸化物は,カラーテレビの赤色蛍光体に使用されている。
→関連項目レアアース

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世界大百科事典(旧版)内のイットリウムの言及

【テルビウム】より

…周期表元素記号=Tb 原子番号=65原子量=158.9254地殻中の存在度=0.9ppm(57位)安定核種存在比 159Tb=100%融点=1356℃ 沸点=2800℃比重=8.272電子配置=[Xe]4f95d06s2 おもな酸化数=III,IV周期表第IIIA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1843年スウェーデンのモサンデルC.G.Mosanderが,それまでイットリウム酸化物とされていたイットリアから三つの元素を分離した。そしてイットリウムの名称のもととなった産地イッテルビーYtterbyから,それを三つに分け,イットリウムyttrium,テルビウムterbium,エルビウムerbiumと命名した。…

※「イットリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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