イバラモ(英語表記)Najas marina L.

改訂新版 世界大百科事典 「イバラモ」の意味・わかりやすい解説

イバラモ
Najas marina L.

池や小川に生えるイバラモ科の沈水性の一年草。茎は水中に立ち上がり,もろく,節から折れやすい。まばらにとげがある。葉は対生し,硬く線形で長さ3~6cm,幅2~3mm,縁に鋸歯があり,鋸歯の先端はとげとなる。雌雄異株で7~9月に葉腋ようえき)に花をつける。雄花は透明な苞鞘(ほうしよう)につつまれ,中にただ1個の葯があり,葯は4室に分かれる。雌花には苞鞘がなく,ただ1個の心皮からなり,中に楕円形の種子が1個できる。世界の温帯熱帯に広く分布する。葉にとげがあるため棘藻(いばらも)といわれる。種小名marinaは〈海の〉という意味である。これは,最初,北欧のバルト海に産するものに名づけられたためである。バルト海は氷河が溶け込み塩分が薄められている。日本では淡水にのみ生え,海水中に生えることはない。トリゲモN.minor All.は茎も葉も細く,葉の幅約0.5mmで,雌雄同株である。葯は1室。種子は細長い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イバラモ」の意味・わかりやすい解説

イバラモ
いばらも / 茨藻
[学] Najas marina L.

イバラモ科の一年草。全草濃緑色、長さ30~60センチメートル、茎は叉状(さじょう)によく分枝、硬質でもろく折れやすい。葉は3枚が輪生して柄がなく、両縁や外表面に顕著な鋭鋸歯(きょし)がある。花期6~10月、葉腋(ようえき)に単生する。雌雄異株。雄花は壺(つぼ)状、長さ3~4ミリメートル、雌花は1心皮性。花粉は水中で媒介され、1果中に長径約5ミリメートル、楕円(だえん)形の種子を1個つくる。雌雄で染色体数が異なり、雌株は2n=12、雄株は2n=13である。温帯から熱帯の湖沼河川に沈水する。

[大滝末男]


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世界大百科事典(旧版)内のイバラモの言及

【沈水植物】より

…湖沼で水草が岸から沖へ帯状に分布する時,沈水植物帯は抽水植物帯や浮葉植物帯よりも沖にできる。これは,水面をヒツジグサのような浮葉植物やヨシのような抽水植物がぎっしりと占めれば,水面下にあり光をめぐる競争で不利なイバラモ,ネジレモなどの沈水植物は生育できないためと考えられる。水中では水の動きがなければ酸素の拡散は遅く,静水中では酸素不足が生じうる。…

※「イバラモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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