イブキジャコウソウ(英語表記)Thymus serpyllum L.ssp.quinquecostatus(Čelak.)Kitam.

改訂新版 世界大百科事典 「イブキジャコウソウ」の意味・わかりやすい解説

イブキジャコウソウ
Thymus serpyllum L.ssp.quinquecostatus(Čelak.)Kitam.

日当りのよい山の岩場や石灰岩地,時に海岸などに生えるシソ科多年草。茎は細く,ややつる状に張って節から根を出す。葉は狭卵形で長さ5~10mm,対生して先は円く,両面に小さい分泌腺が点在し,ふれると香気がある。夏から秋,枝の先に短い穂を作って,淡紅紫色の小型の花を多数つける。萼は紫色を帯びることが多く,唇形でのどの部分に白毛が密生する。花冠は長さ7~8mmのものと,5~6mmのものと,株によって2型ある。アフガニスタンから中国,ヒマラヤ,日本にかけて分布する。ヨウシュイブキジャコウソウssp.serpyllum L.(英名creeping thyme)はヨーロッパ,北アフリカからアジアに分布し,ロックガーデン等に栽培されるとともに,全草を乾かして薬用にする。

 イブキジャコウソウ属Thymusは約35種があり,ヨーロッパ,アジア,アフリカに分布する。タチジャコウソウは高さ30cm内外になる草本状低木でヨーロッパに産し,葉にチモールthymol(C10H14O)を含み,香料タイムを採るために栽培される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イブキジャコウソウ」の意味・わかりやすい解説

イブキジャコウソウ
いぶきじゃこうそう / 伊吹麝香草
[学] Thymus quinquecostatus Celak.
Thymus serpyllum L. subsp. quinquecostatus (Celak.) Kitamura

シソ科(APG分類:シソ科)の草状小低木。日当りのよい山の岩場や草地、石灰岩地帯に多く、まれに海岸近くにも生える。茎は地表をはって所々に根を出し、枝は斜め上に伸び、高さ3~15センチメートル。葉はごく短い柄があり、対生し、卵形もしくは長楕円(ちょうだえん)形で全縁、長さ5~10ミリメートル。2~3対の羽状脈があり、両面に腺点(せんてん)がある。6~7月、枝先に短い花穂をつくり、淡紅紫色で小形の唇形花を密に数段つける。萼(がく)は5裂し二唇形、内面喉部(こうぶ)に白毛が多い。花冠は7~8ミリメートル。北海道から九州、中国、ヒマラヤなどに分布する。全体にチモールを含みよい香りがあり、伊吹山(滋賀県)に多いのでこの名がある。山草として鉢植えにしたり、薬用とすることもある。イブキジャコウソウ属は約200種あり、アジア、アフリカ、ヨーロッパに分布する。

村田 源 2021年8月20日]


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百科事典マイペディア 「イブキジャコウソウ」の意味・わかりやすい解説

イブキジャコウソウ

シソ科の小低木。北海道〜九州の日当りのよい山地にはえる。茎は地上をはい,高さ5〜15cmの枝を立てる。葉は対生し,長楕円形で長さ5〜10mm。6〜7月に茎の上に短い花穂をつけ,長さ5〜8mmの淡紅色の唇形(しんけい)花を開く。全草に芳香があり,乾燥したものを薬用,香料にする。

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