イルカの追い込み漁(読み)いるかのおいこみりょう

知恵蔵 「イルカの追い込み漁」の解説

イルカの追い込み漁

複数の船が船団を組み、イルカの群れを湾内の浅瀬に追い込み捕獲する漁法。イルカ漁業の漁法の一つで、2015年5月現在、日本では和歌山県太地町だけで行われている。
知事許可漁業であるイルカ漁業は、追い込み漁と突き棒漁という二つの漁法がある。追い込み漁の許可が与えられているのは太地町と静岡県伊東市富戸で、それぞれ漁獲枠が決められているが、伊東市富戸では05年以降、1頭も漁獲されていない。太地町では13年には1239頭(調査利用を含む)が捕獲された。追い込み漁で捕獲されたイルカの大部分食用として、また一部は水族館の飼育展示用として生きたまま販売される。
太地町の追い込み漁は、09年に公開された米国のドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」で漁の様子を隠し撮りした映像などが批判的に使われ、反捕鯨団体の抗議を受けた。こうした批判は水族館にも向けられ、15年には、国内動物園や水族館などで構成する日本動物園水族館協会(JAZA)に対して、世界動物園水族館協会(WAZA)が「残酷だ」などとして追い込み漁で捕獲したイルカを購入しないように迫り、JAZAはその要求を受け入れて、追い込み漁で捕獲されたイルカの入手を禁じることを決めた。水族館のイルカの入手は、日本が野生の捕獲に頼ってきたのに対し、欧米では館内で繁殖させる方法主流だという。

(原田英美 ライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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