イワオウギ(読み)いわおうぎ

改訂新版 世界大百科事典 「イワオウギ」の意味・わかりやすい解説

イワオウギ (岩黄蓍)
Hedysarum vicioides Turcz.

高山岩場,礫地(れきち)など向陽地のまばらな草原に生えるマメ科の多年草。本種の外形が中国特産の薬用植物であるゲンゲ属のオウギ(黄蓍)に似ているため,その代用として根を強壮,利尿などのために薬用とした。和名は岩場に生えるオウギの意味である。高さ20~80cmで直立する。葉は羽状複葉で,11~25枚の小葉をつける。小葉は狭卵形で長さ1~3cm,幅4~10mm。花期は6~8月。腋生(えきせい)の穂状花序に多数の蝶形花が集まる。花は淡黄色,長さ12~20mm。豆果は扁平な広線形,長さ2~4cm,幅4~6mm,種子と種子の間に節があり,縁に幅の狭い翼があって,不規則に細かくぎざぎざしている。種子は3~5個。北海道と本州中部以北から東アジアにかけて分布し,また山草として栽植される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワオウギ」の意味・わかりやすい解説

イワオウギ
いわおうぎ / 岩黄耆
[学] Hedysarum vicioides Turcz.

マメ科(APG分類:マメ科)の多年草。別名タテヤマオウギ。茎は叢生(そうせい)してよく分枝し、高さ10~80センチメートル。葉は奇数羽状複葉、小葉は11~25枚、狭卵形で長さ1~2センチメートル。7~8月、茎上部の葉腋(ようえき)に有柄の総状花序を出し、10~30個の蝶形花(ちょうけいか)をつける。花は黄白色でやや下向きに開き、もっとも内側にある1対の竜骨弁が5花弁中もっとも大きい。節果は扁平(へんぺい)で1~4個の小節果からなり、上下の縫合線に沿い幅の不規則な翼をもつ。小節果は広楕円(こうだえん)形で、隆起する網状脈があり、熟すと節で分離して落下し、裂開しない。本州中部地方以北の高山に生え、北海道では山地から低地、ときに川原の砂礫地(されきち)にも生える。朝鮮、中国東北部、シベリア東部にも分布する。

[立石庸一 2019年10月18日]


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百科事典マイペディア 「イワオウギ」の意味・わかりやすい解説

イワオウギ

北海道,本州中北部の高山にはえるマメ科の多年草。東アジアにも分布する。茎は高さ30〜50cmあって数個の奇数羽状複葉をつける。小葉は11〜25個で,狭卵形。6〜8月,葉腋から総状花序を出し,2cm内外の淡黄色の蝶(ちょう)形花を多数つける。果実は扁平な楕円体で,数個のくびれがある。根は太く,中国産の黄耆(おうぎ)の代用品として薬用にされる。

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