イワギキョウ(英語表記)Campanula lasiocarpa Cham.

改訂新版 世界大百科事典 「イワギキョウ」の意味・わかりやすい解説

イワギキョウ
Campanula lasiocarpa Cham.

岩のすきまに群生して大きな青紫色の花を咲かせる高山植物キキョウ科の多年草。アメリカ合衆国ワシントン州から本州中部まで,北太平洋地域に環状に分布している。根茎は細長く岩のすきまを伸び,先に数個の葉を叢生(そうせい)する。根生葉はへら形で長さ1.5~5cm,花茎は1本,高さ3.5~15cm,前年の根生葉の腋(えき)から出る。茎葉は数個,互生し,根生葉より細い。花は1個,ときに2~4個,横向きに咲く。萼裂片は線形で長さ6~11mm,両側に数個の歯牙がある。花冠の長さ2~2.5cm,裂片に毛がない。これに似たチシマギキョウC.chamissonis Fedorovも高山植物で,アレウト列島から本州中部に分布する。花冠は大きく長さ3~3.5cm,裂片に長軟毛をつけ,萼裂片には歯牙がない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワギキョウ」の意味・わかりやすい解説

イワギキョウ
いわぎきょう / 岩桔梗
[学] Campanula lasiocarpa Cham.

キキョウ科(APG分類:キキョウ科)の多年草。根出葉は倒卵状披針(ひしん)形で、とがった鋸歯(きょし)があり、基部は翼のある柄となる。花茎は高さ5~12センチメートル、倒披針形の柄のない小さな葉を数枚互生する。8月、花茎の先に鮮やかな紫色の花を1個横向きに開く。花冠は広鐘形で5裂し、毛はない。萼(がく)は粗毛があって5裂し、裂片は線形で少数の鋸歯があり開出する。果実は蒴果(さくか)で上を向いて裂開する。本州の中部地方以北、北海道の高山帯の岩隙(がんげき)や礫地(れきち)に生え、千島樺太(からふと)(サハリン)、アリューシャンカムチャツカアラスカに分布する。名は、岩場に生え、花がキキョウに似るのでいう。よく似たチシマギキョウは花冠の内面に毛があり、葉に波状の低い鋸歯がある。分布域もほぼ同じである。

[高橋秀男 2021年10月20日]


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百科事典マイペディア 「イワギキョウ」の意味・わかりやすい解説

イワギキョウ

チシマギキョウ

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