イワサザイ(読み)いわさざい(英語表記)New Zealand wren

改訂新版 世界大百科事典 「イワサザイ」の意味・わかりやすい解説

イワサザイ (岩鷯)
New Zealand wren

スズメ目イワサザイ科Acanthisittidaeに属する鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科の鳥はニュージーランド特産の4種からなり,そのうちの1種は絶滅した。いずれも全長10cm前後の小鳥で,尾羽はとくに短く,全体の体型はミソサザイに似ている。現存する3種は,頭上から背,翼上面は全体としてオリーブ色ないしは緑色。くびから腹部ミドリイワサザイでは白色,イワサザイでは淡い帯黄白色,ヤブサザイでは頸部(けいぶ)は白く胸腹部は淡い帯青白色。くちばしはどの種も細くとがっている。ミドリイワサザイAcanthisitta chloris(英名rifleman)はニュージーランドの南北両島に分布し,主として森林にすみ,樹幹部で昆虫クモ類を採食して生活する。イワサザイXenicus gilviventris(英名rock wren)は南島山地岩場や林縁部に生息し,岩場で採食することが多い。ヤブサザイX.longipes(英名bush wren)は南島の森林に生息し,地上樹上で採食する。しかし,どの種も詳しい生態は明らかにされていない。とくに森林性の種は,体の大きさが小さく保護色をしているために観察しにくいといわれる。しかし,チィーチィーチィーと聞こえるよく通る独特の声で鳴くので,その存在を確かめることはできる。絶滅種スティーブンイワサザイTraversia lyalliは,頭上から背,翼上面は褐色,くびから腹部はオリーブ色で灰色の鱗状斑がある。この種は,ニュージーランド南島の北端沿岸にあるステフェン島の灯台守ネコが捕獲してきた十数羽を基に1894年に記載された鳥で,それ以後発見されず,絶滅したと考えられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワサザイ」の意味・わかりやすい解説

イワサザイ
Acanthisittidae; New Zealand wrens

スズメ目イワサザイ科の鳥の総称。全長 8~10cm。ニュージーランドにのみ分布する。4種からなるが,そのうち 2種はマオリ族が移住してきてから絶滅し,現生種は灰褐色の地味なミドリイワサザイ Acanthisitta chloris と全身オリーブ色のイワサザイ Xenicus gilviventris だけである。林内の地上や岩陰巨木の根の陰などを伝うように動き回る。標高 900~2400mの高山一年中生息するが,移入された哺乳類の捕食にあって減少し,高山の環境に近い島に放されて保護がはかられている。体形ミソサザイに似るが,類縁関係が近いわけではない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワサザイ」の意味・わかりやすい解説

イワサザイ
いわさざい
New Zealand wren

鳥綱スズメ目イワサザイ科に属する鳥の総称。同科Xenicidaeの仲間は、ニュージーランド固有の鳥で4種が知られるが、そのうち1種は絶滅している。現存する3種は全長8~10センチメートル、全体に暗緑色またはオリーブ褐色をしている。尾は非常に短く、嘴(くちばし)は細くて足は長めである。「サザイ」という名がついているが、ミソサザイよりもヤイロチョウに近い外観をしている。単独または小群で森林や低木林にすみ、枝葉や幹や岩を移動しながら、昆虫やクモをとって食べる。岩の割れ目や幹の裂け目などに、側面に入口のある球状の巣をつくり、2~5個の卵を産む。抱卵、育雛(いくすう)は雌雄で行う。

[樋口広芳]

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