イワダレソウ(英語表記)Lippia nodiflora(L.)Michx.

改訂新版 世界大百科事典 「イワダレソウ」の意味・わかりやすい解説

イワダレソウ
Lippia nodiflora(L.)Michx.

海岸近くに生えるクマツヅラ科多年草。茎は長く張って分枝し,短いねた毛があって,節からところどころ根を出す。葉は対生して倒卵形,長さ1~4cm,やや質が厚く,縁には数対の鋸歯がある。花は,6~9月頃,葉腋ようえき)から出た柄の先に楕円形の短い穂をつくり,淡紅紫色で,花冠は4裂し,径約2mm。花の基部には扁円形の苞がある。果実は小さくて萼に包まれ,2個の分果に分かれる。和名は海岸の岩地に垂れ下がるので岩垂草とつけられた。本州の関東地方から西,四国,九州,琉球から熱帯地方に広く分布している。

 イワダレソウ属Lippiaは約100種が知られているが,そのほとんどは熱帯から亜熱帯に分布する低木で,大部分は新大陸に産する。ボウシュウボクL.citriodora(英名lemon verbena)のようにレモン様の芳香を有するものがあり,茶の代用として,また食品に香気をつけるために利用され,観賞用に庭園などに栽植されるものもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワダレソウ」の意味・わかりやすい解説

イワダレソウ
いわだれそう / 岩垂草
[学] Phyla nodiflora (L.) Greene
Lippia nodiflora (L.) L.C.Rich. ex Michx.

クマツヅラ科(APG分類:クマツヅラ科)の多年草。茎は長く砂上をはい、葉は対生し、倒卵形で厚く、上半部に鋸歯(きょし)がある。7~10月、葉腋(ようえき)に花茎を直立し、円柱状の花穂をつけ紅紫色の唇形花を開く。本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄の海岸や川岸の砂や岩上に生え、世界の熱帯から亜熱帯にかけて分布する。イワダレソウ属は果実は2分果からなり、世界に約10種、日本には1種が分布する。

[高橋秀男 2021年10月20日]


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百科事典マイペディア 「イワダレソウ」の意味・わかりやすい解説

イワダレソウ

クマツヅラ科の多年草。関東〜沖縄および世界の亜熱帯〜熱帯に分布。海岸の砂地にはえる。茎は分枝して長く砂の上をはい,肉質で倒卵形の葉を対生する。7〜10月,紅紫色の小花が,長い柄の先に円柱形に密に咲く。花冠は唇形(しんけい)。

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