インド商務院(読み)インドしょうむいん(英語表記)Casa de Índia

改訂新版 世界大百科事典 「インド商務院」の意味・わかりやすい解説

インド商務院 (インドしょうむいん)
Casa de Índia

16世紀以降ポルトガルの海外交易を統轄した中枢機関。15世紀の西アフリカ沿岸進出に伴って設けられた商取引機関に起源をもち,最初〈ギニア・ミナ商務院〉と呼ばれたが,バスコ・ダ・ガマによって東洋の香料交易が開かれると,1503年から〈インド・ミナ商務院〉,たんに〈インド商務院〉という名称が現れる。すでに国王はアフリカの金取引を独占していたが,06年には東洋の香料交易をも国王独占とし,海外領の通商はすべてリスボンのインド商務院を通じて行われた。09年に公布された〈インド商務院規約〉によると,同機関は東洋の香料,アフリカの金などの海外商品の輸入販売,香料交易に必要な銀の買付け,船舶の艤装などの海外交易を取り締まるほかに,海外各地の商館に勤務する官吏任命などの行政機能にもたずさわった。商務院長のほかに,香料交易・金取引を担当する財務官,書記官を擁し,また海外交易に伴う係争のための特別裁判所を備えていた。毎年約10隻からなる船団がリスボンを出港,インドのゴアで各地から買い付けられた香料その他を積み込み,約1年半後に帰国した。19年ポルトガル海外交易の最盛期には,アジアの香料,アフリカの金・奴隷マデイラ島砂糖,ブラジルの染料材など,海外交易による収益は国家歳入の実に68%を占めていた。しかし,世界各地に散在する商館の維持,インド商船団の艤装,海難海賊による被害など莫大な出費もかさみ,早くも16世紀初頭から公債の発行を余儀なくされ,その利子はインド交易の収益に相当するようになった。さらに,1530年代には従来の地中海ルートによる香料交易が復活し,16世紀後半から財政事情は急速に悪化していった。スペインによる併合後は〈インド評議会〉,再独立後は〈海外評議会〉と名称を変え機能も変化したが,1833年最終的に廃止
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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