ウィルクス(英語表記)Wilkes, Sir Maurice Vincent

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウィルクス」の意味・わかりやすい解説

ウィルクス
Wilkes, Sir Maurice Vincent

[生]1913.6.26. ダドリー
[没]2010.11.29. ケンブリッジ
イギリスのコンピュータ科学者。コンピュータ科学初期の中心人物の一人で,1949年世界初のプログラム内蔵式コンピュータである EDSAC(電子遅延記憶式自動計算機)を開発。1951年にマイクロプログラミング方式を提唱し,プログラミングに関する最初の著作を共同執筆。1965年にキャッシュメモリに関する初の論文を発表し,1980年にはクライアント・サーバ・コンピューティングを開発した。少年期から電子工学に興味をもち,1934年ケンブリッジ大学セントジョンズ・カレッジで数学の学位を取得するかたわら電子工学を学ぶ。同大学キャベンディッシュ研究所で,1936年修士号,1937年博士号を取得。第2次世界大戦に従軍してオペレーションズ・リサーチの任務につき,1945~80年母校の数学研究所所長(のちのコンピュータ研究所),1965~80年情報工学教授を務めた。その後,アメリカ合衆国ディジタル・イクイップメントの上級顧問技師,マサチューセッツ工科大学非常勤教授を経てイギリスに戻り,1986~2002年オリベッティ・オラクル・リサーチ研究所で顧問を務めた(→オリベッティ)。1967年チューリング賞,1992年京都賞を受賞。2000年ナイトに叙された。

ウィルクス
Wilkes, John

[生]1727.10.17. ロンドン
[没]1797.12.26. ロンドン
イギリスの急進主義政治評論家,政治家。非国教徒の手で教育を受けたのちライデン大学に学ぶ。 1754年バッキンガムシャーのシェリフ,57年下院議員となる。ピット (大)に従い,彼の下野ののちはジャーナリズムに転じビュート (伯)を攻撃。 63年4月週刊誌『ノース・ブリトン』 North Briton第 45号で国王ジョージ3世議会での演説を批判,国王に対する誹謗の罪で逮捕された。議員特権により釈放されたのち,弾圧を恐れてフランスに亡命。 64年議会から除名。 68年2月帰国ミドルセックスから議員に選出されたが,下院はこれを認めずこのあと 69年に3度立候補し,いずれも当選したが議席は与えられなかった。彼は自由の象徴として民衆の支持を集め,議会の腐敗を批判する議会外の急進主義政治運動の発展にきっかけを与えた。 69年以降ロンドンの参事会員,市長に選ばれ,74年には下院に議席を認められた。 76年急進派議員として議会改革を提案。 80年 G.ゴードンの指導した民衆暴動を鎮圧して以後は,政治活動も沈滞。

ウィルクス
Wilkes, Charles

[生]1798.4.3. ニューヨーク
[没]1877.2.8. ワシントンD.C.
アメリカの海軍軍人。南極探検家。南北戦争のときのトレント号事件 (1861.11.8.) でイギリスの商船『トレント』号を海上で停止させた連邦軍艦の艦長。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィルクス」の意味・わかりやすい解説

ウィルクス
うぃるくす
John Wilkes
(1725―1797)

イギリスの政治家。ライデンに遊学後、1757年に下院議員となった。1762年週刊紙『ノース・ブリトン』紙を創刊、ビュート内閣を攻撃した。同紙45号(1763年4月23日)で国王ジョージ3世の演説を非難したため逮捕され、いったん釈放されたものの議員を除名され、大陸に亡命した。1768年に帰国、ミドルセックス州選出の下院議員となったが、翌1769年再度下院から除名され、連続して行われた三度の補欠選挙で当選しながらも議員の地位を認められなかった。1774年ロンドン市長となり、下院にも返り咲いて、議会改革を主張した。1780年のゴードン暴動では民衆を弾圧する側にたったが、1760年代に彼を支持した広範な民衆運動は、イギリスの急進主義運動を成長させる母体となった。

[青木 康]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ウィルクス」の解説

ウィルクス
John Wilkes

1727~97

イギリスの政治家。下院議員となり,1763年『ノース・ブリトン』紙上で国王ジョージ3世の議会開会演説を批判したところ,文書扇動罪に問われ,逮捕・投獄された。議会が追放処分にすると,68年から69年にかけて選挙区は彼を3度にわたって議会に選出し,また「ウィルクスと自由」のスローガンのもとで民衆の暴動も起こり,彼は専制に対して抵抗する英雄たる観を呈した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

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