精選版 日本国語大辞典 「ウェルナー」の意味・読み・例文・類語
ウェルナー
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スイスの化学者。生れはフランスのミュルーズ(1871年からドイツに占領されミュールハウゼンと呼ばれた)。1886年からチューリヒ・ポリテクニクムに学び,93年からチューリヒ大学教授を務めた。配位説を提唱し無機化学構造論を開拓することによって,現代化学の発展に大きな影響を及ぼした。生涯を通じて錯化合物の体系的理解に力を尽くし,170に及ぶ論文を残した。学位論文《窒素を含むさまざまな分子における諸原子の空間配置について》(1890)では,炭素原子が立体的分子を作るというJ.H.ファント・ホフの思想を窒素原子に及ぼして立体化学の枠を拡張した。教授資格取得論文《親和力と原子価の理論への寄与》(1891)では,原子価が一定の方向に向いていてその方向にだけ力を及ぼすという従来の考え方を捨て,親和力は球状の原子の表面全体において一様に引力として作用するという考えを説いた。さらに創刊されて間もない《無機化学雑誌》に掲載された有名な論文《無機化合物の構造論》(1893)では,主原子価および側原子価という概念を導入し,これらの概念に基づき配位説を立てた。この理論によって,その当時まで理解することができなかった錯塩の構造を解明する道が開かれた。ウェルナーとその弟子たちはその後,何千というコバルトのアンミン錯塩の研究など包括的な実験研究を行って,配位説を立証した。とくに配位説に基づく無機化合物の光学異性の理論は重要で,1911年には初めて不斉炭素を含まない光学活性物質クロロアンミンジエチレンジアミンコバルト(III)錯塩とブロモアンミンジエチレンジアミンコバルト(III)錯塩とを得た。これらの業績によって13年ノーベル化学賞を受けた。
執筆者:山口 宙平
ドイツの鉱物学者,地質学者。ドイツ,シュレジエンの鉄工業技師の家に生まれ,フライベルク鉱山学校をへて,ライプチヒ大学で法律を学んだ。在学中に,鉱物の特徴についての本を出版したのが認められ,1774年フライベルク鉱山学校に迎えられ,以後死ぬまで指導的地位にあり,ヨーロッパ各国からの学生を教育した。彼はすべての岩石は始原の大洋での沈殿物であるとする水成説で,地球全体の岩石を分類し形成順序をまとめ,87年《諸岩類の分類と記載Kurze Klassifikation und Beschreibung der verschiedenen Gebirgsarten》を出版,岩石の記載をおこなった。また91年には《鉱脈の形成についての新説Neue Theorie von der Entstehung der Gänge》を著し,水成説で鉱脈・岩脈の形成を論じ,研究法をのべた。彼の弟子にはA.vonフンボルト,L.vonブッフなど著名な学者が多い。
執筆者:清水 大吉郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ドイツ生まれのスイスの化学者.スイスのチューリヒ工科大学で化学を学び,1889年卒業後,無給助手を務めながらA.R. Hantzsch(ハンチ)のもとで研究し,1890年学位を取得.1891年冬,パリのP.E.M. Berthelot(ベルトロ)のもとで過ごした後,1892年チューリヒ工科大学の私講師となり,1893年チューリヒ大学の教授となる.当時,有機化学で成功をおさめたF.A. Kekulé(ケクレ)の原子価の理論を無機化合物に適用したとき,元素の原子価を一定としては説明が難しい場合が生じていた.Wernerは金属の原子価を主原子価と副原子価に区別し,前者はイオンとの結合に寄与するのに対して,後者は各種の中性分子との結合にも寄与し,両者の合計は化合物に固有の配位数となると提案した.この理論にもとづいて,錯体の立体構造から予測された異性体の数を伝導度測定から実験的に確認し,さらに立体異性体の合成に成功した.1911年光学異性体の分割に成功し,配位説を実証した.この結果は,光学活性を炭素原子に帰していた当時の考えから論争をよんだが,かれは1914年に炭素をまったく含まない光学活性錯体を合成し,光学活性が立体化学に起因することを示した.これらの成果は現代の無機化学の基礎となり,化学の他分野にも多大な影響を与えた.以上の業績により,1913年スイス人としてははじめてノーベル化学賞を受賞した.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…彼らの唱えた炭素正四面体説(1874)は,分子内の原子の配列を三次元的にとらえる立体化学の基礎となった。A.ウェルナーは,遷移金属がつくるある種の化合物においては,金属原子は単純な原子価説では説明できない原子価をもつことを説明する〈配位説〉を提案した。配位説は20世紀に開花した錯体化学への道を開いた。…
…とくに19世紀末E.フィッシャーが糖の立体異性を炭素正四面体説で説明するのに成功して炭素正四面体説の強い支えとなった。 20世紀に入るとA.ウェルナーの配位理論によって,金属錯体でも分子不斉による光学異性の存在することが主張された。そしてついに1911年シス‐[CoCl(NH3)(en)2]2+で光学異性体が分離されたし,炭素がまったく入っていない光学異性体ということではヘキソール塩[Co{(OH)2Co(NH3)4}3]X6(Xは1価の酸基)ではじめて光学異性体の存在が示され,彼の理論の正しいことが証明された。…
…これらと錯分子とをひとまとめにしたものが狭義の錯化合物で,配位化合物ともいう。ふつうの錯体(ウェルナー錯体という)においては配位原子は孤立電子対で中心原子に配位結合で結合している。したがってG.N.ルイスの酸・塩基の定義により,中心原子はルイス酸であり,配位子はルイス塩基である。…
…しかしこの間有機化学は化学結合と構造理論の進展から大きく発展をとげていったのに対し,無機化学は単なる組成の化学にとどまっていて,飛躍的な発展がなされるというわけにはいかなかった。1893年ドイツのA.ウェルナーが配位理論(配位説)を提出し,無機化合物の構造論に対する出発点となったが,これはその後の無機化学の飛躍的な発展の基礎となるものであった。20世紀に入ると量子力学が成立し,原子の電子構造が明らかにされ,化学結合の本質が解明されるとともに,X線構造解析をはじめとする各種の構造研究手法の開発によって現在のような無機構造化学が確立されることになった。…
※「ウェルナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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