ウォーレン(J. Robin Warren)(読み)うぉーれん(英語表記)J. Robin Warren

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウォーレン(J. Robin Warren)
うぉーれん
J. Robin Warren
(1937― )

オーストラリアの病理学者。アデレード大学卒業後、王立病理医科大学の研究員を経て王立パース病院の病理医となった。ピロリ菌に関する一連の研究成果により、2005年、B・J・マーシャルとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。

 1979年に胃潰瘍(いかいよう)患者の患部の組織を顕微鏡で調べていたところ、患者のほぼ半数の胃の幽門付近に螺旋(らせん)状の細菌が多数存在することを発見した。同僚のマーシャルとともに、この細菌と胃潰瘍の因果関係を調べるために細菌の培養にとりかかったが、この菌は増殖が遅い菌だったために最初はうまくいかなかった。1982年、たまたま復活祭の休暇で数日間放置していたら、増殖していたことに気がつき、「胃の幽門にいる螺旋状の細菌」という意味の「ヘリコバクター・ピロリ」と名づけ、マーシャルと共同で発表した。

 この細菌が胃潰瘍を発症させるものと二人は予測し、1984年にマーシャルが自らピロリ菌を飲んで急性胃炎を発症させ、その患部からピロリ菌を発見して因果関係も立証した。それまで胃潰瘍は、胃酸過多ストレスなどが原因と考えられていたが、この発見によって胃潰瘍、胃炎胃癌(いがん)などはピロリ菌の感染が原因とわかり、これらの病気治療予防に画期的な成果をもたらした。

[馬場錬成]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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