ウサギコウモリ(英語表記)long-eared bat
Plecotus auritus

改訂新版 世界大百科事典 「ウサギコウモリ」の意味・わかりやすい解説

ウサギコウモリ
long-eared bat
Plecotus auritus

翼手目ヒナコウモリ科の哺乳類。体長ほどもある卵形の長い耳介をもつのでこの名がある。国外ではヨーロッパ,シベリアからインドまでのアジア,イランエジプト北アフリカ,国内では北海道,本州,四国に分布するが,北方系の種で本州中部以北に多い。体長4~5cm,前腕長3.5~4.5cm,体重5~10g。吻(ふん)はやや長く突出し,鼻孔は外方に突出する。耳介は卵形で長さ4cm前後,左右は頭頂部で合一し,耳介内面に20~25本の特有の横ひだがある。体背面は灰褐色または灰黄褐色。低山ないし亜高山の森林地帯の樹洞,山小屋あるいは洞窟廃坑などに5~20頭,ときに50頭以上100頭もの群れで生息する。日没後約1時間後にねぐらを離れ,樹葉の間を縫って飛翔しながら葉の上に止まるハエ,ガ,アリその他の昆虫を捕食する。とくにガを好み,大きな獲物は一定の食事場所へ運んで食べる。昆虫をとらえるとき,空中に静止することができる。ときに地上を走り,または垂直の木の幹をよじ登り,水中を巧みに泳ぐ。気が荒く,他のコウモリを襲うことがある。6~7月に1子を生み,10月から4月上旬まで冬眠する。眠るときは長い耳介を体側にたたみこみ,耳介の前方にある耳珠だけをアンテナのように直立させる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウサギコウモリ」の意味・わかりやすい解説

ウサギコウモリ
うさぎこうもり / 兎蝙蝠
long-eared bat
[学] Plecotus auritus

哺乳(ほにゅう)綱翼手目ヒナコウモリ科の動物。耳がウサギのように長いので、この名がある。インド以北のアジア、ヨーロッパ、アフリカ北部に分布し、国内では北海道、本州、四国より知られ、富士山や尾瀬の亜高山地帯に数が多い。前腕長3.5~4.5センチメートル、頭胴長4~5センチメートル、翼開長15センチメートル、耳は卵形で、長さはほぼ体長に等しく、その約半分の長さの耳珠(じしゅ)がある。体の上面は黄褐色または灰褐色。洞窟(どうくつ)、樹洞、家屋などに小群または単独ですみ、日没後にねぐらを離れ、森林内の樹間を緩やかに飛び回り、メイガ科、ヤガ科、シャクガ科などの鱗翅(りんし)目やヒロバカゲロウ科などの脈翅(みゃくし)目のほか、夜間に活動する昆虫を捕食する。とらえた昆虫は休息所に運び、はねを取り去ってから食べる。眠るときは耳を腕の下に畳み込み、細長い耳珠だけをアンテナのように立てている。気が荒く、共食いすることもある。6~7月に1子を産む。10月なかばから3月中旬まで洞窟などで冬眠する。ミールウォーム(チャイロゴミムシダマシ)やハエの幼虫、蛹(さなぎ)などの餌(えさ)で飼育することができる。

[吉行瑞子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウサギコウモリ」の意味・わかりやすい解説

ウサギコウモリ
Plecotus auritus; long-eared bat

翼手目ヒナコウモリ科。体長4~5cm,前腕長4~4.5cm。体は黒褐色で,腹部は黄褐色。耳が非常に長く (胴とほぼ等長) ,そのため名がこのようにつけられた。秋に交尾し,翌年の6~7月に1子を産む。日本では山地の森林にすみ,洞窟で冬眠し,越冬する。冬眠しているときは長い耳を腕の下にたたみ込んでいる。ガ (蛾) ,ガガンボ,甲虫類などを食べる。本州,北海道,ユーラシア大陸の温帯部,北アフリカに分布する。

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