ウツボグサ(読み)うつぼぐさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウツボグサ」の意味・わかりやすい解説

ウツボグサ
うつぼぐさ / 靭草
[学] Prunella vulgaris L. subsp. asiatica (Nakai) Hara

シソ科(APG分類:シソ科)の多年草。茎は直立して高さ10~30センチメートル、基部から横たわるように若枝を出す。葉は対生し、茎の下部につくものは柄があり、卵状長楕円(ちょうだえん)形で長さ2~5センチメートル、切れ込みの浅い鋸歯(きょし)が少数ある。6~8月、茎の先に短い花穂(かすい)をつくり、密に花をつける。包葉は扁心(へんしん)形、萼(がく)は上が平らな二唇形花冠紫色で筒部は上向きとなり、上唇は兜(かぶと)状。下唇は大きく3裂し、前に突き出て鋸歯がある。側片は小さく、外に曲がる。花穂が弓の矢を入れた靭(うつぼ)の形に似ているのでウツボグサという。山野道端に生え、北海道から九州、中国、朝鮮、樺太(からふと)(サハリン)、シベリアに分布する。ウツボグサ属は世界に7種あり、亜寒帯から熱帯の高山まで広く分布している。

村田 源 2021年8月20日]

薬用

花の咲いたあと、花穂は立ったまま枯れて褐色に変わるので、漢方では枯れた花穂を集めたものを夏枯草(かこそう)といい、消炎、利尿剤として甲状腺(こうじょうせん)肥大、乳腺炎、高血圧症、結膜炎などに用いる。日本では、るいれき頸部(けいぶ)リンパ節結核)の要薬として有名である。ヨーロッパでは原種P. vulgaris L.とタイリンウツボグサP. grandiflora Jacq.を民間薬として肺結核、胃腸病に用いる。

[長沢元夫 2021年8月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ウツボグサ」の意味・わかりやすい解説

ウツボグサ
Prunella vulgaris L.ssp.asiatica(Nakai)Hara

山や野原の道端や草地に生えるシソ科の多年草。和名は,花序の形を矢を入れる靫(うつぼ)に見たててつけられた。茎は基部が少し横にはって立ち上がり,高さ20~30cm,数対の葉が対生する。6~8月ごろ,茎の先端に長さ3~8cmの密な花穂を作って青紫色の花をつける。萼は筒状で長さ7~10mm,唇形で上側は平らになってとげ状の3歯がある。花冠は長さ約2cm,立ち上がって上唇はかぶと状になる。花の基部には扁心形の苞がある。夏に花穂が枯れると黒くなるところから夏枯草(かこそう)という名があり,果穂を漢方で夏枯草とよび陰干しにして煎じて利尿剤として用いられる。また血圧降下作用がある。日本および中国,シベリアに分布し,ヨーロッパにはやや花の小さいセイヨウウツボグサssp.vulgaris(英名self-heal)が分布する。高山には花の大きいタテヤマウツボがある。
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百科事典マイペディア 「ウツボグサ」の意味・わかりやすい解説

ウツボグサ

シソ科の多年草。北海道〜九州,東アジアの日当りのよい草地にはえる。高さ20〜30cm,葉は対生,長卵形で柄がある。6〜7月,茎の頂に靭(うつぼ)に似た花穂をつけ,濃紫色の唇形(しんけい)花を密につける。花冠は長さ1.5〜2cm。夏になると花穂は枯れて黒くなる。これを夏枯草(かこそう)といい利尿剤にする。

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