ウマノスズクサ(読み)うまのすずくさ

改訂新版 世界大百科事典 「ウマノスズクサ」の意味・わかりやすい解説

ウマノスズクサ (馬の鈴草)
Aristolochia debilis Sieb.et Zucc.

薬用にもされるウマノスズクサ科の無毛の多年生つる草本。草質のつるは長さ2~3mになり,上部でよく分枝する。葉は互生し,三角状狭卵形で,葉身基部はやや耳状に広がり,長さ3~8cm,基部から5~7本の葉脈が出て,葉柄がある。夏~秋にかけ,葉腋(ようえき)に紫色を帯びた筒状の花被におおわれた花を,1個ずつつける。花被の基部は球状にふくれ,上部はらっぱ状になり,長さ5~6cm,内に6本のおしべを有する。子房は下位。暖温帯に分布し,本州中部以南から九州,中国大陸中・南部にみられる。根は青木香(せいもつこう)と呼ばれ,解毒に,果実は馬兜鈴(ばとうれい)と呼ばれ,咳止めや去痰に用いられる。

 ウマノスズクサ属Aristolochiaは熱帯を中心に約300種が知られ,多くは木本性のつる植物である。その特異な花形を観賞するために栽植される(アリストロキア)だけでなく,民間薬草としても利用される種が多い。日本には,他に木本性のつるになるオオバウマノスズクサA.kaempferi Willd.や草本性のつる植物のマルバウマノスズクサA.contorta Bungeが分布している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウマノスズクサ」の意味・わかりやすい解説

ウマノスズクサ
うまのすずくさ / 馬鈴草
[学] Aristolochia debilis Sieb. et Zucc.

ウマノスズクサ科(APG分類:ウマノスズクサ科)の多年草。根はよく地中をはって所々に苗を生ずる。全草無毛。茎は細く、初めは直立しているが、やがて他のものにまつわりつく。葉は互生し卵状披針(ひしん)形で、基部は心臓形となる。7~8月に各葉腋(ようえき)に1個の花をつける。花弁はなく、萼(がく)は緑紫色の筒状となり、先がらっぱ状に開く。雌しべは6本で、花柱が互いに合生して短い柱になり、この周りに6本の雄しべが着生する。子房は下位。果実は球形蒴果(さくか)で、熟すと6裂する。原野や川の土手などに生え、東北地方南部以西に分布し、沖縄さらに中国にまで広がる。名は、果実のようすが馬の首にかける鈴に似ることによる。根は青木香(せいもっこう)とよばれ、虫毒や蛇毒の解毒剤として用いられた。また、成熟果実を乾燥したものは馬兜鈴(ばうれい)とよばれ、解熱、去痰(きょたん)、鎮咳(ちんがい)薬として使われた。同属のオオバウマノスズクサは葉は円心形で大きく、南関東地方以西および中国にも分布する。

菅原 敬 2018年7月20日]


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百科事典マイペディア 「ウマノスズクサ」の意味・わかりやすい解説

ウマノスズクサ

関東〜九州,中国の草地やぶなどにはえる,ウマノスズクサ科のつる性多年草。葉は卵状披針形で青緑色を帯び,長さ4〜7cm。花は夏,葉腋につく。萼は曲がったラッパ形で長さ3〜4cm,外側黄緑色内側は紫褐色,花弁はない。果実は球形で6裂し,柄があってぶら下がる。これを馬の首にかけた鈴に見立ててこの名がある。

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世界大百科事典(旧版)内のウマノスズクサの言及

【トウヒレン】より

…英名はcostus root。なお生薬で木香と呼んでいるものには,青木香(せいもつこう)(ウマノスズクサの根),川木香(せんもつこう)(キク科のVladimiria souliei (Franch.) LingやV.denticulata Lingの根),土木香(どもつこう)(キク科のInula helenium L.の根)などがある。 トウヒレン属Saussureaは花が美しいので山草として栽植されることもあるが,重要な観賞植物には育成されていない。…

【木香】より

…生薬名。キク科のSaussurea lappa Clarke(木香)をはじめ,ウマノスズクサ科のウマノスズクサAristolochia debilis Sieb.et Zucc.(青(せい)木香),キク科のVladimiria souliei (Franch.) Ling,V.denticulata Ling(川(せん)木香)やInula belenium L.(土(ど)木香)など,植物学的にはさまざまな種の根が木香の名で利用される。精油を含み,主成分はセスキテルペンで,そのほかステロイド,トリテルペノイドも含有する。…

※「ウマノスズクサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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