ウミケムシ(読み)うみけむし

改訂新版 世界大百科事典 「ウミケムシ」の意味・わかりやすい解説

ウミケムシ (海毛虫)
Chloeia flava

多毛綱ウミケムシ科の環形動物毛虫のように長い剛毛をさかだてることからこの名がある。本州中部以南に広く分布する。体は紡錘形で,長さ7~8cmくらいであるが,15cmになるものもある。環節は30~40あり,各節の背面には正中線上に楕円形紫色斑紋が1列に並び,斑紋の両側には密に枝分れした木の葉状えらがある。頭部は小さく,紫褐色の5本の感触手,1対の副感触手,2対の眼などがある。各節の両側には背剛毛束と腹剛毛束とがある。背剛毛束の剛毛は白くて長く,先端近くに約20個の鋸歯状突起が並んでいる。体に刺激を与えると芋虫のように体を丸め,背剛毛を扇状に開く。この剛毛に刺されると炎症を起こし,赤くはれる。腹剛毛も長くて黄色。夕方に水面近くを泳ぐのが見られ,また魚釣りの餌にくいついて釣れることもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミケムシ」の意味・わかりやすい解説

ウミケムシ
うみけむし / 海毛虫
[学] Chloeia flava

環形動物門多毛綱遊在目ウミケムシ科に属する海産動物。本州中部以南、インド洋フィリピンオーストラリアに分布する。体長5~8センチメートル、体幅2センチメートル前後。体は紡錘形で、環節数30~40個。各環節の背面には正中線上に1個の卵形の紫色斑紋(はんもん)があり、各斑紋は黄白色の帯で囲まれている。前口葉は小さく、短い5本の感触手があり、1個の細長い肉冠が第4環節まで伸びる。眼点は2対あり、前対のものは大きい。背面の斑紋の両側には細かく枝分れしたえらが1対存在する。いぼ足には白くて長い剛毛が密生し、ときにそれを直立させるので、ちょうど毛虫のような形になるのでこの名がある。夕刻に水面近くを泳ぐことがあり、剛毛の先端が鋭く、刺されると痛い。

[今島 実]


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百科事典マイペディア 「ウミケムシ」の意味・わかりやすい解説

ウミケムシ

多毛類ウミケムシ科の環形動物。体長7〜8cm,体幅2cmくらいの紡錘形。体節数は30〜40。背面正中線に沿ってまるい紫色の斑紋が1列に並び,その両側には羽毛状の鰓(えら)がある。剛毛は白くて長く,敵に襲われると体をまるくして毛を立てる。これに刺されると炎症を起こし,赤くはれる。本州中部以南〜オーストラリアに分布し,沿岸の砂泥底にすむ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウミケムシ」の意味・わかりやすい解説

ウミケムシ
Chloeia flava

環形動物門多毛綱遊在目ウミケムシ科。体長 10cm内外,体節数 30~40。体の背面に木の葉状の鰓が2列に並ぶ。各体節には白くて長い剛毛がたくさん生えていて,これに刺されると痛い。本州中部以南,南西太平洋,インド洋に分布する。

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