ウメ(梅)(読み)ウメ

百科事典マイペディア 「ウメ(梅)」の意味・わかりやすい解説

ウメ(梅)【ウメ】

中国原産のバラ科の落葉小高木で,九州には野生があるという。初春,葉に先だって香り高く咲く花は万葉以来愛されてきた。葉は楕円形〜卵形,花は前年の枝の葉腋に1〜3個ついてほとんど柄がなく,径2〜2.5cm,白色〜紅色,花弁は5枚が基本である。庭木盆栽,切花として観賞する花梅(はなうめ)の品種は,おもに江戸時代に作られ,現在でも300以上がある。大別して,原種に近い野梅(やばい)性,花のつく小枝とがくが緑色をした緑萼(りょくがく)あるいは青軸(あおじく)性,古枝の髄まで赤い紅梅性,アンズと交雑して作られたアンズ性,秋〜冬に小枝が紫紅色になり大輪の花が咲く豊後(ぶんご)性のほか,枝のしだれる枝垂(しだれ)性などの系統がある。果実を収穫する目的で栽培されるものは実梅(みうめ)といわれ,〈白加賀〉〈小梅〉が全国的に有名。おもな産地は和歌山,群馬,長野など。同一品種だけでは実りが悪いので,数品種混植する必要がある。収穫は6月中旬ころからで,果実は梅干,梅酒,梅酢などにされる。昔は未熟な実をふすべた烏梅(うばい)/(からすうめ)や青梅果肉をはいで乾燥した剥梅(むきうめ)として,媒染剤薬用にもされた。未熟果はアミグダリンを含み,生食すると有毒である。
→関連項目万葉植物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウメ(梅)」の意味・わかりやすい解説

ウメ(梅)
ウメ
Prunus mume; Japanese plum tree

バラ科の落葉小高木で,中国江南地方の原産。日本では古くから各地で栽培され,九州には野生状態の原種があるともいわれる。木の高さは 6mに達し,よく分枝し,樹皮は硬い。早春,葉に先立ってほとんど無柄の花を開く。花は白または淡紅色で直径1~3cm,芳香がある。萼片,花弁ともに5枚で,中に多数のおしべと1本のめしべがある。核果はほぼ球形で一方に浅い溝があり,梅雨の頃に黄色に熟する。果実の表面にはちぢれた毛を密生し,果肉は酸味が強く,中に1個の核を含む。果実で梅干,梅酢,梅酒などを造り,また加工して甘露梅や梅ようかんなどの菓子をつくる。未熟の青梅にはアミグダリンが含まれ,食べるとこれが分解されて青酸を生じ,中毒するといわれる。材は緻密で堅く,床柱,箱類,彫刻その他の細工物に使われる。樹皮と材はともに梅皮 (うめかわ) といい,染料に用いられる。加賀の梅染や沖縄の梅染は古くから有名である。ウメの花の観賞は万葉の昔から盛んで,水戸の偕楽園,京都の北野天満宮,福岡県の太宰府天満宮などは有名である。

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