エゾヨツメ(英語表記)tau emperor
Aglia tau

改訂新版 世界大百科事典 「エゾヨツメ」の意味・わかりやすい解説

エゾヨツメ
tau emperor
Aglia tau

鱗翅目ヤママユガ科の昆虫。日本産のこの科のガとしてはもっとも小型で,開張も雄は6cm内外,雌は9cm内外。前翅中央には黒紋があって,その中に〈く〉の字形の白紋があり,後翅にはこれより大きな黒環があり,その中は青色,中央に錨形の白紋がある。エゾヨツメという和名は,最初に北海道で発見されたのでその古称のエゾに,4個の大きな眼状紋を結びつけたものである。成虫は春に出現し,灯火に飛来するが,他のヤママユガと違って,日没後すぐに飛来する。幼虫カバノキハンノキブナコナラなど多くの樹木の葉を食べ,さなぎで越冬する。ユーラシア大陸に広く分布し,日本では北海道,本州,四国,九州の平野部からかなり標高の高い山地まで各地に産する。英名学名にも使われているtauは,ギリシア文字のτのことで,後翅の眼状紋中にある白紋が,この文字に似ているからである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エゾヨツメ」の意味・わかりやすい解説

エゾヨツメ
えぞよつめ / 蝦夷四ツ目
[学] Aglia tau

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤママユガ科に属するガ。はねの開張は雄60ミリメートル、雌は100ミリメートル内外で、この科の種類のなかでは小形。ヨーロッパから日本までユーラシアに広く分布し、北海道産はjaponica、本州、四国、九州産はmicrotauという亜種に分類されている。はねは赤褐色で、前ばねには小さな、後ろばねには大きな紫色の眼状紋があり、その中央に白紋をもつ。一般に雌のほうが淡色で、触角が雄のように羽状でないので、大きさとともに区別は容易である。成虫は春だけ出現し、ほかのヤママユガと異なり、日没後すぐに灯火に飛来する。標高の高い山地では初夏に成虫が出る。幼虫はカバノキ、ハンノキ、ブナ、クリ、コナラ、カシワなど種々の樹木の葉を食べる。春に孵化(ふか)し、初夏に蛹(さなぎ)となって、そのまま越冬する。

[井上 寛]

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