エヌマ・エリシュ
Enuma Elish
バビロニア=アッシリアの創世叙事詩。アッカド語の冒頭2句から『エヌマ・エリシュ』 (「昔,高きところに」の意) として知られる。7枚の書板から成り,ニネベのアッシュールバニパル図書館跡出土の文献 (N版) のほか,アッシュール出土の文献 (A版) ,キシュ出土およびウルク (聖書のエレク) 出土の新バビロニア時代の文献などが残存している。新年祭の4日目に詠誦され,ことほがれたという。おおよそ次のような内容をもつ。世界の初めに,淡水の神アプスと海水の女神ティアマットの交合から神々の種族が発生したが,アプスは彼の子孫がふえるにつれて,若い神々のたてる騒がしい物音に耐えられなくなり,彼らを滅ぼそうとはかった。しかしこの計画を見破った知恵と魔術の神エアはその能力を使って逆にアプスを殺し,彼に代って水の支配者となった。ティアマットはアプスの死に復讐しようとして,キングを総大将とする恐ろしい怪物の軍勢を生み出し,神々に攻撃をしかけ,一時は彼らを窮地に陥らせた。しかし神々はこの危地を脱するため,エアの息子のマルドゥク (A版はアッシュール) を王位につけ,彼をティアマットとの戦いに向かわせたところ,マルドゥクはみごとにティアマットを倒し,キングと怪物たちを捕虜にして凱旋した。そして彼はティアマットの死体を2分して,それから天地をつくり,そのあとでエアの助言に従い,捕虜にしたキングも殺して,その血から人類をつくった。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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「エヌマ・エリシュ」の意味・わかりやすい解説
エヌマ・エリシュ
古代バビロニアの宇宙創成神話。バビロンの主神マルドゥクに捧げられ,深淵の淡水アプスーと海の塩水ティアマトの混合による神々の出現,マルドゥクとティアマトを代表とする新旧両世代の神々の戦いと前者の勝利,ティアマトの遺体からの天地の開闢,キングの血からの人間の創造などを語る。
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