エノキグサ(読み)えのきぐさ

改訂新版 世界大百科事典 「エノキグサ」の意味・わかりやすい解説

エノキグサ (榎草)
Acalypha australis L.

日本全土の畑地路傍に普通にみられるトウダイグサ科の夏緑一年生雑草。エノキに似た葉をつけるところから榎草とよばれる。茎は直立し,30~50cmになる。8月ころ,開花。花は単性花で,小さな褐色雄花が多数集まって穂状の花序をつくり,その基部に緑色の苞葉に包まれた雌花が通常1個つく。この苞葉が編笠に似るところから,アミガサソウとも呼ばれる。属の学名Acalyphaは,〈美をつかんでいない〉という意味で,雌花も雄花も美しい花弁などをもたない風媒花である。雄花の穂は花後に脱落し,苞葉に包まれて黄色の3室からなる蒴果(さくか)をつける。中国では全草を解熱利尿剤などの民間薬として用いる。ウスリー地方,朝鮮,中国,フィリピン,ベトナムなどの東アジア各地に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エノキグサ」の意味・わかりやすい解説

エノキグサ
えのきぐさ / 榎草
[学] Acalypha australis L.

トウダイグサ科(APG分類:トウダイグサ科)の一年草。全草に斜上する短毛がある。茎は直立して分枝し、高さ30~50センチメートル。葉は長柄があり、卵形または狭卵形で膜質、長さ3~8センチメートル、幅1.5~3.5センチメートルで、表面と裏面葉脈上に毛がある。花期は8~10月、葉腋(ようえき)の小枝の先に雄花が穂状花序をなし、基部に、心臓形の包葉に包まれた雌花をつける。雄花は小形で萼(がく)は花期に4裂し、雄しべ8本。雌花の萼は3裂する。蒴果(さくか)は球形で表面に毛がある。畑や道端にごく普通にみられ、北海道から九州に生え、中国、フィリピンなどに広く分布している。名はエノキに似た葉形に由来する。

[小林純子 2020年6月23日]


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百科事典マイペディア 「エノキグサ」の意味・わかりやすい解説

エノキグサ

トウダイグサ科の一年草。日本全土,アジアに分布。茎は枝分れして高さ約30cm,柄の長いエノキの葉に似た卵形の葉を互生する。8〜10月,葉腋に細長い花序を出し,上部に雄花,下部に雌花をつける。花序の基部に編笠に似た二つ折りの包葉があるためアミガサソウの名もある。

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世界大百科事典(旧版)内のエノキグサの言及

【薬用植物】より

…同じ植物がある地域では薬用に利用されるのに,別の地域では無用の場合がある。例えば中国でミゾカクシ(中国名,半辺蓮,キキョウ科)は腫瘍や毒蛇の咬傷に,エノキグサ(中国名,血見愁,トウダイグサ科)は止血剤として,内服されたり外用される。両植物はいずれも日本に自生しているが,日本ではまったく使われていない。…

※「エノキグサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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