エル・シッド(英語表記)El Cid

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エル・シッド」の意味・わかりやすい解説

エル・シッド
El Cid

[生]1043頃.ブルゴス近郊ビバール
[没]1099.7.10. バレンシア
中世スペイン軍人名将。本名ロドリーゴ・ディアス・デ・ビバール。 Cidはアラビア語の sid (君主) が語源。傑出した野戦指揮官で,生涯にわたって輝かしい勝利を収めたところから,中世騎士物語に由来する「勝利者」 Campeadorとも呼ばれる。カスティリアの小貴族ディエゴ・ライネスの子。カスティリア王サンチョ2世 (強力王)のもとで軍人としての名声を不動のものとした。サンチョ2世の死後,カスティリア=レオン王アルフォンソ6世 (勇猛王)に仕えて,ムーア人との戦いで名をあげたが,王と衝突して追放された。その後,サラゴサのムーア王国の政治顧問となり,数々の功績をあげた。 1083年王と和解が成立したがすぐに破れた。しかし,87年アフリカのアルモラビド (ムラービト) 朝のスペイン侵入対策に苦慮したアルフォンソは再び彼を側近として帰参させた。ムーア王国におけるアルフォンソの宗主権確立に尽力したが,89年再び宮廷を追われ,以後バレンシア征服にかかった。征服後は王にも等しい地位を築いた。スペインの国民的英雄であることから,彼をテーマにした文学作品も多く,代表的なものにコルネイユの『ル・シッド』 Le Cidがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「エル・シッド」の意味・わかりやすい解説

エル・シッド

スペインの国民的英雄。カスティリャ王サンチョ2世に仕え,王の死後各地を放浪し一時サラゴサのイスラム教徒に味方したが,その後イスラム教徒と戦い,英雄的死を遂げた。のち多くの吟遊詩人にうたわれ,13世紀初めには叙事詩わがシッドの歌》が成立した。
→関連項目バレンシア(都市)ブルゴス

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「エル・シッド」の解説

エル・シッド
El Cid (本名 Rodrigo Díaz de Vivar)

1043?~99

中世スペインの英雄。カスティリャ‐レオン国王アルフォンソ6世の家士ながら追放の憂き目に遭い,生涯の大半を国外で送る。イスラームのサラゴサ国王の傭兵として活躍したのち,1094年よりバレンシア王国を支配,ムラービト軍の侵攻をくいとめた。武勲詩『わがシッドの歌』でその武勇がたたえられる。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

とっさの日本語便利帳 「エル・シッド」の解説

エル・シッド

一一世紀のスペインで、ムーア人からキリスト教文明を護った国民的英雄。武勲詩『わがシッドの歌』でその功績が謳われ、一七世紀にはコルネイユも詩劇『ル・シッド』を書いた。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エル・シッド」の意味・わかりやすい解説

エル・シッド
えるしっど

シッド

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android