オイケン(Walter Eucken)(読み)おいけん(英語表記)Walter Eucken

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

オイケン(Walter Eucken)
おいけん
Walter Eucken
(1891―1950)

ドイツの経済学者。有名な哲学者ルドルフ・オイケン(イエナ大学教授)を父に、また物理化学者アルノルト・オイケン(ゲッティンゲン大学教授)を兄にもつ。イエナ大学卒業後、ベルリン大学私講師、チュービンゲン大学教授を経て、1927年フライブルク大学経済学正教授に就任。50年3月20日ロンドン大学出講中に客死した。彼はもともとドイツ歴史学派の影響を受けていたが、第一次世界大戦後ドイツの超インフレーション解明が歴史学派の経済学では不可能とみてこれと決別した。彼はまず貨幣理論を、ついで資本および利子理論を研究し、ベーム・バベルクウィクセルの成果をさらに展開した『資本理論の研究』(1934)は有名である。また主著『国民経済学の基本問題』(1940)では、各経済体制に固有な経済循環図式に応じた経済分析に重点を置き、政府は国民経済活性化のために政策的に自由経済を擁護すべきだと主張している。

 彼を中心として、アメリカのシカゴ学派にも比肩する競争原理・自由経済賛美のフライブルク学派が形成され、その思想は、第二次大戦後の西ドイツの経済復興にあたって指導的役割を果たした。

[島津亮二]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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