オオカミウオ(読み)おおかみうお(英語表記)Bering wolffish

改訂新版 世界大百科事典 「オオカミウオ」の意味・わかりやすい解説

オオカミウオ (狼魚)
wolf fish
Anarhichas orientalis

スズキ目オオカミウオ科の海産魚。寒海性の魚で,アラスカベーリング海オホーツク海サハリンなどに分布している。日本では北海道のオホーツク海沿岸を中心とした狭い範囲に分布している。英名は両あご前部に強大な円錐状の犬歯があり,容貌がオオカミに似ていることに由来するといわれ,和名もこの英名による。また,両あごの側部,鋤骨(じよこつ),口蓋骨(こうがいこつ)に粗大な臼歯(きゆうし)のあることが大きな特徴で,これを用いて二枚貝や巻貝をくだいて食べたり,大型の甲殻類を食べる。性質は荒い。産卵期は10~11月。卵は直径約5mmあり,粘着性があるので塊状となっている。この卵塊を親魚が守る習性がある。体長1mに達する。その容貌などから,水族館で人気があり,近年各地で飼育されている。食用となるが,日本ではあまりとれないため,利用価値は低い。アイヌ語で〈チェップ・カムイ(神の魚)〉と呼ばれ,この魚がとれるとニシン豊漁になるという言い伝えがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオカミウオ」の意味・わかりやすい解説

オオカミウオ
おおかみうお / 狼魚
Bering wolffish
[学] Anarhichas orientalis

硬骨魚綱スズキ目オオカミウオ科に属する海水魚。新潟県、茨城県以北、オホーツク海、ベーリング海、北極海にかけて分布する。体は細長く、頭は丸い。上下両あごの前端に4~6本ずつの強大な犬歯があり、奥には臼歯(きゅうし)が並ぶ。腹びれはない。成魚の体は暗青色または暗緑色で、顕著な斑紋(はんもん)がないが、若魚には数本の褐色の縞模様がある。水深100メートル以浅の岩場にすみ、貝類の堅い殻をかみ砕き、またカニ類やエビ類もかみ切って食べる。産卵期は冬で、卵径5~6ミリメートルの大形の粘着卵を産み、直径20センチメートルぐらいの卵塊をつくる。親魚はその卵塊を体で巻いて保護する。全長1メートルぐらいになる。

 この魚は獰猛(どうもう)で奇怪な顔つきをしているので、水族館などでは人気がある。日本では食用としないが、ヨーロッパやアメリカでは切り身にして「ロックサーモン」と称して販売されている。アイヌ語で「チップカムイ」(神の魚)とよばれ、この魚がとれるとニシンが豊漁となるという言い伝えがある。

[尼岡邦夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオカミウオ」の意味・わかりやすい解説

オオカミウオ
Anarhichas orientalis

スズキ目オオカミウオ科の海水魚。全長 1mをこえる。体は細長く,頭部は大きい。両顎前部にはなはだ強い円錐形の犬歯があってオオカミを連想させるのでその名がある。背鰭棘条が発達する。体は暗色。北日本オホーツク海ベーリング海に分布する。

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