オオトカゲ(英語表記)monitor

翻訳|monitor

改訂新版 世界大百科事典 「オオトカゲ」の意味・わかりやすい解説

オオトカゲ
monitor

トカゲの最大種を含むオオトカゲ科Varanidaeのトカゲ類31種の総称。大型ではあるがふつうは人に対して危険でなく,すべて無毒。“陸のワニ”と呼ばれるコモドオオトカゲVaranus komodoensis(英名Komodo dragon)の全長3mをはじめ,1~2m級の大型種が大半を占める。31種が北部を除くアフリカ,小アジア,アジア南部およびオセアニアに分布している。容姿が恐竜時代の爬虫類をほうふつとさせるが,事実オオトカゲ類の起源は古く,オーストラリアからは5mに達する鮮新世時代の化石種も知られている。現生種の最大は,全長ではニューギニア産のニューギニアオオトカゲV.salvadoriiで,最大4mに及ぶものと考えられている。2.5mに達するものにオーストラリア産ペレンティオオトカゲV.giganteus(英名perentie),南アジア産マライオオトカゲV.salvator(英名two-banded monitor)がある。オーストラリアには20種のオオトカゲ類が分布し,それらには大型種ばかりでなく小型の固有種も含まれる。とくにミジカオオオトカゲV.brevicaudaは全長20cmしかなく,名のように尾が短い。他の数種も25~40cmほどの小型。

 オオトカゲ類は全身が細鱗で覆われ,飾りうろこはまったくない。四肢と長い尾は強大。大半は地上性であるが,パプア産の美しい緑色のエメラルドオオトカゲV.prasinusのように樹上性のものや,西サハラからパキスタンに分布するサバクオオトカゲV.griseusのように砂漠に生息するものもある。昼行性で地上を速く走り,木にも登るが泳ぎもうまく,水辺を好む種類も多い。危険にあうと頸部を膨らませ,シューッと音を立てて脅すが,強力な尾は武器となりむちのように振って相手にたたきつける。あごの力が強く,鋭い歯とつめは武器にもなり大きな獲物を引きさくのに役だつが,尾も獲物を倒す道具となる。餌はネズミ,小鳥,カエルヘビ,トカゲ,昆虫類のほか,ワニ,カメ鳥類の卵を好み,甲長15cmもあるカメをまるのみにすることもある。雌は地面や木の穴に15~30個ほどを産卵し150~200日ほどで孵化(ふか)する。良質の皮革材料として乱獲された結果各種とも数が減り,現在はすべて保護下にある。ミクロネシアのように野ネズミ退治にオオトカゲを導入している地域もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオトカゲ」の意味・わかりやすい解説

オオトカゲ
おおとかげ / 大蜥蜴
monitor

爬虫(はちゅう)綱有鱗目(ゆうりんもく)オオトカゲ科に属するトカゲの総称。この科Varanidaeは大形トカゲの大部分を含むグループで、約31種がアフリカ、小アジア、熱帯アジア、オセアニアに広く分布する。化石種には5メートルに達するものもあったが、現生種の最大はコモドオオトカゲVaranus komodoensis、ニューギニアオオトカゲV. salvadoriiの全長約3メートルで、後者には4メートルを超えるものがあるといわれる。また同属Varanusには全長50センチメートル以下の小形種も含まれ、オーストラリア産のミジカオオオトカゲV. brevicaudaなどは全長わずか20~30センチメートルにすぎない。オオトカゲは頭骨の構造などヘビとの類似点があり、舌も細長くて先が二つに分かれる。頭部は細長くて、力強いあごと歯がある。四肢が発達して太く、指には鋭いつめがあり、尾は長く強力で自衛の武器となり、獲物を打ち倒すにも役だつ。森林、草原、砂漠に穴を掘ってすむが、木にも登り、好んで水に入る。餌(えさ)は昆虫、小動物、鳥、ワニの卵などである。細かい鱗(うろこ)と美しい斑紋(はんもん)が皮革製品の材料として重用されてきたが、数が減少し、現在ではすべての種が保護の対象となっている。

[松井孝爾]

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百科事典マイペディア 「オオトカゲ」の意味・わかりやすい解説

オオトカゲ

オオトカゲ科の総称。30種ほどが知られ,大半は1mを超える。マライオオトカゲは全長2.5m,東南アジア,華南に分布し,森林や草原にすむ。尾の力は強く,防御に役だつ。木にも登り,小型哺乳(ほにゅう)類,鳥卵などを捕食。〈陸のワニ〉と呼ばれるコモドオオトカゲ(コモドドラゴン)は3.2m。インドネシアのコモド島,フロレス島にすむ。現生種の最大は,ニューギニア産のニューギニアトカゲで,最大4mに及ぶ。
→関連項目トカゲ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオトカゲ」の意味・わかりやすい解説

オオトカゲ
Varanidae; monitor

トカゲ目オオトカゲ科に属する動物の総称。1属 30種から成る。現生のトカゲのなかでは体が最も大きくなり,最大種コモドオオトカゲでは全長 3mに達するが,なかには 30cmに満たないものもある。胴は大きく,尾は細長い。四肢はよく発達し,強力な爪をそなえている。舌はふたまたに分れ,餌をまるのみにする。尾は再生しない。すべて肉食性で,小動物を捕食する。アフリカ,アラビア半島,アジア南部,オーストラリアなどに分布する。

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