オオムラサキ(チョウ)(読み)おおむらさき(英語表記)great purple emperor

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオムラサキ(チョウ)」の意味・わかりやすい解説

オオムラサキ(チョウ)
おおむらさき / 大紫蝶
great purple emperor
[学] Sasakia charonda

昆虫綱鱗翅(りんし)目タテハチョウ科に属するチョウ。日本の国蝶(こくちょう)としてよく知られており、75円の通常切手の図案にも使用された。日本では北海道から九州にわたって分布するが、北海道では南西部の札幌市、小樽(おたる)市、夕張(ゆうばり)市とその近辺に産地は限定される。東京付近では武蔵野(むさしの)の雑木林にまれではなかったが、現在ではほとんど絶滅した。日本南西部の暖地では山地帯のみに産し、一般にその数は少ない。日本における分布の南限は宮崎県小林(こばやし)市、鹿児島県伊佐(いさ)市。外国では朝鮮半島、中国に分布し、アジア東部の特産種。はねの開張90ミリメートル内外、一般に北方産、山地産は小形で、南方や暖地に向かうにつれて大形となる。雄のはねの表面は紫色に輝くが、雌にはこの紫色部がない。後ろばね裏面の地色は黄色のものと白色のものがあるが、白色のものは関西地方以南に多い。年1回の発生で、暖地では普通6月中・下旬から、寒冷地では7月中・下旬から発生する。ときに10月に第2化を生ずることがあるが、これは正常の経過ではない。幼虫食草エノキエゾエノキで、エノキ属以外の植物は食草とはならない。越冬態は幼虫で、食草(食樹)の根際の落ち葉中に潜んで冬を越す。

白水 隆]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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