改訂新版 世界大百科事典 「オオムラサキ」の意味・わかりやすい解説
オオムラサキ
Sasakia charonda
鱗翅目タテハチョウ科の昆虫で,同科の日本産のものでは最大種で,世界でも有数の大型タテハである。開張は雄が9.5cm前後,雌は11.5cm内外。東アジアの特産で,日本では本州を中心に北海道南西部,四国と九州中部まで分布する。和名は大型の紫色のチョウの意味である。翅の表面は濃褐色,中心部に白色紋が数個,外周部に多くの黄色紋,後翅肛角には紅色の1紋がある。雄の前翅の約半分,後翅の約1/7が鱗粉の構造により強く青紫に光る。雌にも鈍い赤紫色の光沢がある。大きさと黄色紋,後翅裏面の色調は地方差が大きく,北海道,東北産は小型で黄色みが強く,西日本産は大型で白みが強い。朝鮮半島,中国,台湾産のものでは後翅裏面に斑紋の輪郭が濃く現れる。九州産のものにもわずかながらこの傾向が認められる。年1回の発生で,6月下旬から8月中旬まで成虫が見られる。樹液に集まるが,腐った果物やムクゲの発酵した花にくることもある。幼虫はエノキ,エゾエノキの葉を食べ,寒地では3・4齢,暖地では4・5齢の幼虫で越冬する。1957年には日本の国蝶に選ばれたほか,78年には環境庁の自然指標昆虫10種の一つに指定された。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報