オオヨコバイ(読み)おおよこばい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオヨコバイ」の意味・わかりやすい解説

オオヨコバイ
おおよこばい / 大横這

昆虫綱半翅(はんし)目ヨコバイ科のオオヨコバイ亜科Cicadellinaeに属する昆虫の総称、またはそのなかの1種。ヨコバイ類の亜科分類は、頭部の形、単眼の位置、翅脈などによるが、本亜科では、頭部は大きく、前方に膨出し、単眼は頭頂の中央近くかまたは頭部後縁寄りに2個ある。よく似たヨコバイ亜科Deltocephalinaeでは、単眼が前縁近くにあり、この点だけで容易に区別できる。体表は滑らかなものが多く、後翅は幅広い。体長5~15ミリメートルと、比較的大形な種が多く、東南アジアの熱帯地方には30ミリメートル近くにもなる大形種が知られている。

 種名オオヨコバイCicadella viridisは、体が緑色で光沢が鈍く、体長は雄8ミリメートル、雌約10ミリメートル。普通、雄のほうが緑色みが強い。日本からヨーロッパにかけて広く分布する。卵で越冬果樹農作物害虫とされる。近縁ツマグロオオヨコバイBothrogonia japonicaは、本亜科中、日本最大種で体長は12~15ミリメートル。体は黄緑色でやや滑らか。翅端は黒色であり、和名はこの特徴に由来する。種々の樹木に寄生し、例外的に成虫で越冬する。シロズオオヨコバイ、キスジカンムリヨコバイなどのカンムリヨコバイ類、クワキヨコバイなどのフトヨコバイ類は、現在はいずれも本亜科に含められる。高山に局所的に分布するキタヨコバイやババオオヨコバイでは、はねが短小化する。

 一般に多食性で、いろいろな植物に寄生する。オオヨコバイは草間から枝上にまでみられるが、産卵はおもに枝中に行い、そのため果樹園では産卵痕(こん)が枝折れの害の原因となる。ツマグロオオヨコバイは5月ごろになるとアジサイなどに群生し、排出物を雨のように落とすことがある。多量の糖類を含んだ、いわば甘露の雨である。電灯にもよく飛来し、しばしば腕や首すじを刺すことがあるが、血液を吸うのではない。

[林 正美]


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改訂新版 世界大百科事典 「オオヨコバイ」の意味・わかりやすい解説

オオヨコバイ (大横這)

半翅目オオヨコバイ科Tettigellidaeに属する昆虫の総称,またはそのうちの1種を指す。日本より約10種が知られ,ヨコバイ科の種によく似ているが,やや大型のものが多い。単眼が頭部の上部にある点で区別される。もっともふつうな種がオオヨコバイCicadella viridisである。体長は10mm内外,色彩は緑色がふつうだが,黄色あるいは青色を帯びる個体もある。おもに雑草中に生活する。ときにムギやダイズなどの農作物を加害することがある。よく灯火にひかれて屋内に飛来する。次いでツマグロオオヨコバイBothrogonia japonicaがよく目につく種類である。体長が13mmと大型で,美しい黄緑色,翅の先端部が黒色の顕著な種である。成虫で越冬して,3月下旬ころより活動を始める。そのころよく飛び回り,いろいろな樹木につく。6月下旬になると,クワ,アジサイ,キリなどに集まって産卵をする。7~8月には幼虫が見られ,葉や枝から汁を吸って育ち,8月下旬より新成虫が出現する。年1回の発生である。
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百科事典マイペディア 「オオヨコバイ」の意味・わかりやすい解説

オオヨコバイ

半翅(はんし)目ヨコバイ科の昆虫の1種。体長10mm内外,淡緑色。日本全土のほか東アジア〜ヨーロッパに広く分布。卵で越冬し,成虫は年1回,夏〜秋に発生し,雑草間にごく普通。各種の農作物,果樹の害虫として知られる。
→関連項目ヨコバイ

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