オナリ神(読み)おなりがみ

改訂新版 世界大百科事典 「オナリ神」の意味・わかりやすい解説

オナリ神 (おなりがみ)

琉球諸島の宗教観念。姉妹に兄弟を守護する霊威があるという信仰。オナリは兄弟(エケリ)に対して姉妹を指し,その霊威を表す場合にオナリ神という。この観念は日常生活の中にも生きており,兄弟に関して,姉妹の発言が尊重されることもある。兄弟が船旅に出るとき,お守として姉妹が手ぬぐいや毛髪を持たせる習慣があったが,旧時代には船旅に出る人はかぎられ,一般の信仰とはいえない。農村では,稲の収穫儀礼播種(はしゆ)儀礼先祖供養などをオナリが主宰する例が広く分布する。嫁した後も実家に帰って行事にたずさわるところに特色がある。オナリの敬称形ウミナイビは王の娘を意味し,オナリが娘世代を指す語であった可能性もある。西日本では,田植どきなど,食事の用意をする女性をオナリと呼ぶが,オナリ神も供物の取扱者の色彩が強い。オナリが家の祭りの供物をつかさどったのが,原形かもしれない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のオナリ神の言及

【沖縄[県]】より

…〈聞得大君〉は高級神女三十三君の上位に位する大君であり,聞補君(ちふじん)ともあてられ,名高い意でキコエを冠するという。また国王のオナリ神として,その霊力をもって国王の安泰と国の隆昌を保障するものであったとされ,国家泰平,航海安全,五穀豊穣,稲麦の穂祭,干ばつの祈願などがなされた。オナリ神信仰は,兄弟に対して姉妹が霊的に優位にたつというもので,国家から村落レベルに至る神女組織をささえる信仰の一つであった。…

【兄弟∥姉妹】より

…さまざまな家族制度を兄弟姉妹関係を視点としてみれば,兄弟姉妹間の連帯をなんらかの形で強調もしくは尊重するものと,兄弟姉妹間の分離を促進し,そのかわりに親子関係や夫婦関係を強調もしくは尊重するものの二つに大別できる。 兄弟姉妹関係を強調する家族制度としてとくに注目されるのは大家族制(拡大型家族),同族組織,オナリ神信仰,均分相続制,レビレート婚(兄弟逆縁婚),ソロレート婚(姉妹逆縁婚)である。日本における大家族制の最も一般的な形態は兄弟姉妹のうち複数の男の兄弟が結婚後配偶者をともなって生家にとどまり(多子残留),同一の家族を形成するものであり,親子関係に加えて兄弟間の連帯が強調される家族といえる。…

※「オナリ神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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