オルタナティブスクール(英語表記)alternative school

改訂新版 世界大百科事典 「オルタナティブスクール」の意味・わかりやすい解説

オルタナティブ・スクール
alternative school

もう一つの学校,代りの学校などと直訳できる。しかし,alternativeという語には〈思想や行動における重要な変化〉というニュアンスがあり,従来の学校教育とは異なった学校を意味する。この種の試みは,近代には〈新教育〉運動などの形で不断にあったが,オルタナティブ・スクールは,1960年代後半にアメリカに起こったフリー・スクールfree school,オープン・スクールopen school,〈壁のない学校〉などとさまざまな名称で呼ばれる学校教育改善の営為を指している。1957年のソ連の大陸間弾道弾,人工衛星打上げの成功に衝撃(スプートニク・ショック)をうけたアメリカは,科学教育を中心に教育・研究の急速かつ全面的な向上をはかった。しかし,この改革によって初等中等教育では校内暴力,怠学,欠席,ドロップアウトなどの教育荒廃が起こり,60年代に入り全面化するにいたった。これに対し60年代後半から,黒人,プエルト・リコ人などのアメリカ社会における少数民族救済からオルタナティブ・スクールがはじまった。その特徴としては,(1)小規模クラスによる人間性回復,(2)児童生徒の積極的な授業計画等への参加,(3)能力主義・競争主義原理等を弱める,(4)市民の広範な支援,などがあげられる。当初私立校中心だったが,しだいに公立校にも拡大していき,70年代末には数千校を数えた。義務教育を中心とする学校教育を根底から否定するI.イリイチらの脱学校deschooling論とは異なる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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