カギノテクラゲ(英語表記)Gonionemus vertens

改訂新版 世界大百科事典 「カギノテクラゲ」の意味・わかりやすい解説

カギノテクラゲ
Gonionemus vertens

ヒドロ虫綱ハナガサクラゲ科の腔腸動物刺胞動物)。触手の先端近くが鉤(かぎ)状に曲がっているところからこの名がある。北海道から沖縄まで広く分布し,南方では5~6月ごろアマモの中で,北方では7~8月ごろホンダワラに付着しているのが見られる。他物には傘のほうで逆さになって付着している。傘は比較的扁平で,寒天質は薄いが硬い。北日本産のものは南方のものよりやや小型で,直径15mmほど。生殖腺と触糸は褐色で,口柄は淡い褐色。傘の放射管は4本あり,放射管上に生殖腺のひだが見られる。触手は16本以上で,80~100本あり,先端近くの反口側に付着細胞がある。口柄は短く,口唇は4個あって白い。一般に北日本産の個体は,南方のものより触手数や生殖腺のひだの数なども少ないところから別種キタカギノテクラゲとしていたが,今は同種と考えられている。ポリプは単立で群体をつくらず,長さ0.3~0.5mm,4~6本の糸状触手をもつ。ポリプの上には水母芽(すいぼが)のほかにプラヌラ状の芽も生じ,これは母体より離れて新しいポリプになる。刺胞毒が強く,有害なクラゲの一つとされている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カギノテクラゲ」の意味・わかりやすい解説

カギノテクラゲ
Gonionemus vertens

刺胞動物門ヒドロ虫綱淡水クラゲ目ハナガサクラゲ科。傘は直径 15mm,高さ 3mmの皿形で,寒天質は薄いがじょうぶである。傘の縁には 16~80本の細い褐色の触手が並び,触手間には触手と同数平衡器がある。口柄は短く,4個の白い口唇をもつ。7~8月頃に北海道東北地方海岸ホンダワラの間に見られる。刺胞毒(→刺胞)が非常に強く,刺されると痛い。北太平洋北大西洋に広く分布する。(→クラゲ刺胞動物ヒドロ虫類無脊椎動物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カギノテクラゲ」の意味・わかりやすい解説

カギノテクラゲ
かぎのてくらげ / 鉤手水母
[学] Gonionemus vertens

腔腸(こうちょう)動物門ヒドロ虫綱ヒドロイド目ハナガサクラゲ科に属する海産動物。クラゲの傘は皿状ないし半球状で直径1.5~2センチメートル、傘縁に40~100本みられる触手はその先端近くで折れ曲がっており、そのためにこの名がある。放射管は4本、その全長に沿って生殖腺(せん)がひだをつくって発達する。口柄は短い。普通、浅海アジモの間などを泳いでいるが、ときどき触手の先端近くにある粘着細胞でアジモにくっついて静止するか、あるいはまた傘を下にして海底に休止する。触手、口柄、生殖腺は褐色。日本の各地沿岸のほか世界に広く分布する。北海道沿岸にみられるキタカギノテクラゲは本種の1変種とされるが、これは多少小形であり、また強い刺胞毒をもっている。ポリプ形はきわめて小形で退化したもので、普通肉眼では識別できないほどであるが、4~6本の触手をもち、単体である。その体上にクラゲ芽ができるほか、小さなプラヌラ様のものを無性的に芽出し、それは付着してまた新しいポリプとなる。

[山田真弓]


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