カサブランカ(英語表記)Casablanca

翻訳|Casablanca

精選版 日本国語大辞典 「カサブランカ」の意味・読み・例文・類語

カサブランカ

[1] (Casablanca) アフリカ北西部、モロッコ王国大西洋岸にある港湾都市重化学工業が発達し、鉄道・道路網が集中している。
[2] 〘名〙 (Lilium Casablanca から) ユリ属の園芸植物交配種で、ヤマユリに似るが純白。切り花用に多量に栽培される。

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デジタル大辞泉 「カサブランカ」の意味・読み・例文・類語

カサブランカ【Casablanca】[映画]

米国の映画。1942年作。監督はマイケル=カーティス。主演はボガートバーグマン。第二次大戦下のモロッコの港町カサブランカを舞台にした恋愛映画。第16回アカデミー賞で3部門を受賞した。

カサブランカ(Casablanca)

スペイン語で、白い家の意》モロッコ最大の都市。大西洋に面する港湾都市で、商業や金属・化学などの工業が盛ん。アラビア語名、ダルエルベイダ。人口、行政区300万(2007)。
[補説]作品名別項。→カサブランカ

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改訂新版 世界大百科事典 「カサブランカ」の意味・わかりやすい解説

カサブランカ
Casablanca

1943年製作のアメリカ映画。マイケル・カーティス監督作品。〈ハリウッドメロドラマ〉の名作の1本であり,今日では映画史を超えて一種の神話的イメージを獲得したいわゆる〈カルトムービー〉の1本となっている。第2次世界大戦中,ドイツ軍に占領されたヨーロッパから逃れて渡米しようとする人々の渡航拠点になっていたフランス領モロッコのカサブランカで,〈リックス・カフェ・アメリカン〉という酒場を経営しながら,ファシスト,ドゴール派,亡命者らが入り乱れる中で独自の立場を貫くアメリカ人リックはハンフリー・ボガートの当り役の一つとなり,《マルタの鷹》(1941)などによって築かれた〈ハードボイルド〉の魅力に,さらにロマンティックなイメージをつけ加え,スターとしての人気を不動のものにした(実際,この映画の後の契約更改により彼は当時世界一の高給取りのスターとなる)。この映画でひさしを目深に折ったソフト帽とともに身にまとったトレンチコートは,〈カサブランカ・トレンチコート〉と呼ばれるまでに有名になり,ボガート神話を象徴するトレードマークとなった。1939年のアナトール・リトバク監督《ナチ・スパイの告白》に始まるハリウッドの反ナチ映画の1本でもある。劇中で酒場の黒人ピアニスト,サム(ドゥーリー・ウィルソン)の弾く挿入曲(1931年にH.ハプフェルドがブロードウェー・レビュー中の曲として作曲した)《時の過ぎゆくままAs Time Goes By》も有名になった。霧の空港で演じられるヒロイン,イングリッド・バーグマンとボガートの別れ,ドイツ将校たちの合唱するドイツ国歌をフランス人たちの《ラ・マルセイエーズ》が圧倒するくだりなどの名シーンは,ウッディ・アレン脚本・主演の《ボギー!俺も男だ》(1972),ニール・サイモン脚本の《名探偵再登場》(1978)などのパロディ映画で引用,あるいはパロディ化されている。
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カサブランカ
Casablanca

アフリカ北西部,モロッコの大西洋岸の平地部のほぼ中央にあり,モロッコ最大の都市で経済の中心。アラビア語ではダール・アルバイダーDār al-Bayḍā。人口339万(2003)。古代にはフェニキア人の小さな港があったが,やがてさびれ,長い間寒村だった。ヨーロッパ人商人の進出とともに,19世紀後半以降,人口増加がはじまり,20世紀初頭にはほぼ2万人の都市になった。1907年以降フランスが本格的なモロッコ侵略をはじめると,その拠点としてカサブランカの港が整備され,植民地的都市発展が開始された。12年にモロッコがフランスの保護領になると,ラバトが政治上の首都になったが,後背地に豊かな農業地帯とフリブガKhuribqaのリン鉱山をもつカサブランカは,ヨーロッパとモロッコ各地を結ぶ金融・商業網の中心として,ヨーロッパ人とモロッコ人をひきつけた。26年に人口が約11万に達し,モロッコ最大の都市になった。第2次大戦後,食品工業,繊維工業など軽工業中心の工業化が始まると,立地条件の良いカサブランカに工場が建設されるようになり,経済活動の集中度がさらに高められた。

 1956年の独立時の人口は約80万(うちヨーロッパ系17万)で,その後ヨーロッパ系人口は減少するが,農村人口の流入が続き,80年には230万(全人口の約11%)の大都会になった。都心部は高層ビルが建ち並ぶ商業地域,東部は工業地域で,南部と西部に高級住宅街があり,旧市街と周辺部には小住宅が密集して建てられている。ヨーロッパ化した豊かな国際都市,失業者と地方出身者があふれるアラブ的な過密都市,カサブランカは二つの対照的な顔をもつ都市である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カサブランカ」の意味・わかりやすい解説

カサブランカ
Casablanca

アラビア語ではダールアルバイダー Ad-Dal al-Baydāで「白い家」の意。モロッコの大西洋岸にある港湾都市。ラバトとジャディーダとの間に位置し,第1貿易港,商工業の中心としてモロッコ最大の都市。港湾付近が旧市で,元来アラブ系住民が住み,一部城壁に囲まれ,白壁の家々が迷路のような町並みをつくっている。近年カサブランカに住むユダヤ人の大半がここに住む。城壁の外にフランス人が町を建設し,官庁,銀行,ホテル,百貨店が集中。付近に新しいイスラム教徒の居住区が発展している。カサブランカの起源ははっきりしないが,中世には漁村や海賊の基地であったらしい。 18世紀後半スルタンのシディ・ムハンマド・イブン・アブドゥッラーが町を再建し,港を開き貿易を行なった。 1907年フランスが占領。フランス保護領 (1912~56) の初期に L.リヨテ元帥がカサブランカをモロッコの主要港に発展させる政策をとった。現在モロッコの貿易量の約4分の3はこの港を経由。 23年以来リン鉱石が主要輸出品。重要な工業製品は砂糖,たばこ,セメント,繊維製品,エレクトロニクス,皮革製品,食品缶詰,ビール,清涼飲料などである。手工業品として絨毯が有名。国際空港があり,マラケシュ,ラバト,タンジール,フェスの諸都市に鉄道と道路が通じている。人口 213万 9204 (1982推計) 。

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百科事典マイペディア 「カサブランカ」の意味・わかりやすい解説

カサブランカ

モロッコ中部,大西洋岸の港湾都市。同国最大の貿易港,商工業都市。鉄鋼,製油,化学肥料,セメント,食品加工などの工業が行われる。南西郊に国際空港がある。古くアンファとして知られた港町であったが,15世紀にポルトガル人が破壊,18世紀末再建。1907年フランス領となってモロッコ侵略の拠点として発展。第2次大戦中はド・ゴールによるフランス解放勢力の基地であった。1943年のカサブランカ会談の地。カサブランカもアラビア名のダール・アルバイダーも〈白い家〉の意。293万4000人(2004)。

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デジタル大辞泉プラス 「カサブランカ」の解説

カサブランカ

①1942年製作のアメリカ映画。原題《Casablanca》。第二次世界大戦下、フランス領モロッコの港町カサブランカを舞台にしたメロドラマの名作。監督:マイケル・カーティス、出演:ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、ポール・ヘンリードほか。第16回米国アカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞受賞。
②宝塚歌劇団による舞台演目のひとつ。脚本:小池修一郎。2009年、宝塚大劇場にて宙組が初演したミュージカル。①を原作とする。

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世界大百科事典(旧版)内のカサブランカの言及

【アメリカ映画】より

…またナチス・ドイツから逃れてきたラング,サーク,シオドマーク,ワイルダーらの映画監督を受け入れ,そのほか,アメリカ映画音楽の基礎を築いたチェコ生れのE.V.コーンゴールド,オーストリア生れのM.スタイナー,俳優ではイギリス人のケーリー・グラント,フランス人のシャルル・ボアイエ,スウェーデン人のイングリッド・バーグマン等々,つねに〈外国人〉を輸入し〈アメリカ映画〉を補強してきたことがその事実を物語っている。しかも,とりわけアメリカ映画的なアメリカ映画である西部劇の作り手がアイルランド人の移民の子であるジョン・フォードであり,アメリカン・ロマンスの名作であり〈もっともアメリカ的な愛国精神〉に貫かれた映画として知られる《カサブランカ》(1942)の監督が,ハンガリー人のマイケル・カーティスであるというところにアメリカ映画の特質があるといえよう。しかも,30年代には,ほとんどすべてのスターがアングロ・サクソン系の名まえを名のった。…

【カーティス】より

…61年の《コマンチェロ》を最後に,100本以上のハリウッド映画を監督した。アカデミー監督賞を受賞した《カサブランカ》(1943)が有名だが,エロール・フリン主演の〈チャンバラ活劇〉(《海賊ブラッド》1935,《ロビン・フッドの冒険》1938,等々)や冒険スペクタクル(《進め竜騎兵》1936,など),ジェームズ・キャグニー主演のギャング映画《汚れた顔の天使》(1938)やミュージカル《ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ》(1942),また歴史劇《女王エリザベス》(1939),〈フィルム・ノアール〉の名作とされる《深夜の銃声》(1945)など各ジャンルの秀作を残している。【岡田 英美子】【広岡 勉】。…

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