日本大百科全書(ニッポニカ) 「カサモチ」の意味・わかりやすい解説
カサモチ
かさもち
[学] Nothosmyrnium japonicum Miq.
セリ科(APG分類:セリ科)の多年草。古くはササバソラシともよんだが、いずれも意味不明。高さ0.6~1.5メートル、茎は紫色で分枝し、1~2回3出複葉をつける。小葉は卵形で長さ2~6センチメートル、幅1~3センチメートル、鋸歯(きょし)があり、縁毛をつける。葉柄は長さ3~10センチメートル、8~10月に径4~7センチメートルの複散形花序をつくり、白色花を開く。総包葉片と小総包葉片は線形ないし披針(ひしん)形でいずれも乾膜質で反り返る。5枚の花弁は楕円(だえん)形、萼歯(がくし)はない。果実は広円形で基部は多少へこむ。果皮に油管が多い。中国原産(黄河以南に分布)で、日本では古くから栽培し野生化もしている。根を真藁本(しんのこうほん)または当帰様(とうきで)の藁本と称して鎮痛、鎮痙(ちんけい)作用があるので、感冒時の頭痛、筋骨の痛みに用いる。単に藁本の名を用いる場合もあるが、これは中国の黄河以南に分布するセリ科のLigusticum sinenseにあてるのが正しい。またワサビデの藁本と称して同じくセリ科のヤブニンジンOsmorhiza aristata Makino et Yabeの根を利用することがある。これはともに薬効が類似しているためである。
[長沢元夫 2021年11月17日]