ミャンマー連邦に含まれる七つの州の一つ。面積8万7800km2,人口114万(1994)。州都はミッチーナー。ビルマ(現,ミャンマー)独立と同時に設置され,行政的には18郡に区分される。ミャンマー最北端に位置し,西はインド,東と北は中国に接する。わずかな平地を除けば州全体が山岳地。州内を南北に流れる二つの河川,マリカとヌマイカが州都の近くで合流してイラワジ川となっているほか,チンドウィン川もこの州に源を発している。地域差はあるが,降雨量は平均年2000~4000mm。森林4900km2に対し,農地は650km2と極端に少ない。主要産物は,チークなどの林産資源と,ヒスイ,コハク,エメラルド,ルビーなどの宝石類で,一部で焼畑耕作が行われている。住民は主要民族のカチン族のほか,リス,ラワンなどの民族が中心。
執筆者:大野 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ミャンマー(ビルマ)北部カチン州を中心に、中国雲南省などにも居住する民族。狭義のカチンはジンポー(景頗)ともよばれ、チベット・ビルマ語派カチン語群の言語をもつ。広義には、「カチン」がかつてビルマ北東辺境部の山地民の一般的呼称であったように、この地域に居住する少数民族のアチ、マル、ラシ、ヌンなどを含む。広義の「カチン」の人口は、ミャンマー側で50万前後、中国側で10万程度とされる。
言語上の相違にもかかわらず、カチン共通の文化がみられる。生業形態は一部を除いて焼畑耕作で、耕作地が村落の長によって割り当てられる慣習がある。精霊を信仰し、山間にある村落の入口には、供犠(くぎ)柱と精霊の祠(ほこら)を伴った神聖な森がある。牛頭(ぎゅうとう)供犠がもっとも重要な儀礼で、司祭役の専門職がいる。儀礼にはジンポー語が用いられる。村落または村落連合が基本的な政治・社会上の単位である。親族組織に分節化した父系親族集団をもち、母方交差いとこを優先する婚姻制度を特徴とする。これらと結び付いて、さらにシャン人の影響も受けて、貴族・平民・奴隷の階層をもつ社会があり、他方で階層分化のない社会が存在する。
[田村克己]
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